項目 森部層Ⅰ(泥岩層) もりぶそう
関連項目 凡例解説>飛騨外縁帯構成岩類>丹生川町北部~国府町地域>森部層
地点 高山市下切町 宮川河床
見学地点の位置・概要    高山から飛騨古川へ向かう国道41号は、高山国府トンネルが開通する前は宮川に沿って北上していた。その途中にJR高山線の上枝(ほずえ)駅に向かう八千代橋交差点があり、その付近の宮川河床に森部層が露出している。八千代橋から左岸(西岸)に沿う道路を上流(南)へ100mほど進むと川側に小さな公園がある。公園の南側に沿って耕作地との間の狭い畦道を注意して川へ向かって進むと、玉石で作られた側壁があり、その下の河床に森部層の泥岩層が露出している。
見学地点の解説    部分的にかなり強く変形作用を受けて粘板岩(スレート)ともいえる薄く割れる片理を示す黒色の泥岩であり、全体に北東~南西方向あるいは東西方向に割れ目が延びている。一部に褶曲構造を示す部分も見られるが、変成岩としての千枚岩といえるほどの岩石になっているわけではない。その中に泥岩より淡い灰色をなす細粒砂岩が、あるいは白色をなす石灰岩がいずれも泥岩とともに強く変形作用を受けてレンズ状にちぎれるように延びて含まれている。なお、この地点の上流側には、泥岩とは対照てきな淡灰色~淡緑色をなす安山岩の岩脈が泥岩を貫いて分布している。
ジオの視点    森部層は、高山市街地北部の中切から丹生川町森部を経て、上宝(かみたから)町堂殿(どうでん)にかけて1,400m以上の層さで分布する。泥岩、泥岩砂岩互層、砂岩などからなり、礫岩や石灰岩をともなう陸棚成堆積物であり、基底部に花崗岩の礫を含む礫岩がある。一部で片理が明瞭にみられるほどの変成作用を受けている。古生代の前~中期ペルム紀を示すフズリナや腕足類の化石を含み、古生代石炭紀の化石を含む荒城川層を不整合に覆うと考えられている。
写真 高山市下切町の宮川河床に露出する森部層(明瞭な片理構造を示す泥岩の中に細粒砂岩がレンズ状にちぎれて含まれる)
(撮影:小井土由光)
写真 森部層の泥岩に挟まれる石灰岩(泥岩とともに片理構造で引き伸ばされたよう見える)
(撮影:小井土由光)
片理
結晶片岩に特徴的に表れ、柱状、板状、鱗片状などの結晶が一定方向に並ぶことで生じる縞状(線状片理)あるいは面状(面状片理)に表れる構造。
千枚岩
細粒の堆積岩あるいは凝灰岩が広域変成作用を受けて形成される葉片状に割れやすい岩石で、泥質岩が圧力を受けた粘板岩(堆積岩)と結晶が明確に一定方向に並ぶ結晶片岩(変成岩)との中間にあり、変化度の最も低い変成岩である。
片理
結晶片岩に特徴的に表れ、柱状、板状、鱗片状などの結晶が一定方向に並ぶことで生じる縞状(線状片理)あるいは面状(面状片理)に表れる構造。
荒城川層
丹生川町北部~国府町地域に分布する飛騨外縁帯構成岩類の一つで、高山市松本町付近から丹生川町北部を経て、上宝(かみたから)町本郷付近まで分布する。おもに安山岩質~玄武岩質の溶岩や火砕岩類からなり,泥岩層、砂岩層、石灰岩層をともない、層厚は約1,100mである。全体に弱い変成作用を受け、分布域の南西部では片理が明瞭となり、結晶片岩~千枚岩になっている。中部層と上部層には石炭紀前期を示すサンゴ化石などが含まれるが、下部には時代を示す化石が含まれていない。奥飛騨温泉郷地域の一の谷層とおおよそ同時期の堆積物であり、岩相は異なるが、ともに浅海陸棚の堆積物である。

地質年代