項目 荒城川層Ⅰ(枕状溶岩) あらきがわそう
関連項目 凡例解説>飛騨外縁帯構成岩類>丹生川町北部~国府町地域>荒城川層
地点 高山市国府町三川 小八賀川河床
見学地点の位置・概要    国府町三川から丹生川町方面へ向かう県道89号高山上宝線を1kmほど進むと、小八賀川に赤い欄干の龍雲橋が架かっている。その対岸に剣緒(つるぎお)神社があり、その西端にあたる道路脇に待避スペースがある。その一角にガードレールの切れ目があり、そこから耕作地の横をまっすぐに河床へ下りる踏み道がある。そこを下りきった河床に荒城川層が露出している。ただし、この踏み道は夏場には草に覆われ、耕作地より下方ではかなり急傾斜になっており、やや険しいルートである。
見学地点の解説    淡緑灰色をなし、肉眼では結晶がほとんど確認できない細粒均質な苦鉄質溶岩が枕状溶岩を作って分布している。枕状溶岩はかなり扁平化しており、弱い片理も示すことで、その本来の形態はほとんど残していないが、周縁に細粒部で囲まれた輪郭をもっている。枕状溶岩の“枕”はもともとは下に垂れ下がった逆しずく型をなして積み重なっており、それをもとに扁平化した形を復元して推定すると、下流側が下位と判断できる。なお、この見学地点には条件により近づけない場合もあり得るため、別地点に同じ荒城川層の見学地点(荒城川層Ⅱ)を用意しておく。
ジオの視点    荒城川層は、高山市街地北部の松本町付近から丹生川町北部を経て、上宝(かみたから)町本郷付近まで約1,100mの層さで分布する。おもに安山岩質~玄武岩質の溶岩や火砕岩類からなり,泥岩層、砂岩層、石灰岩層をともなう浅海陸棚成堆積物である。全体に弱い変成作用を受け、分布域の南西部では片理が明瞭となり、結晶片岩千枚岩になっている。中部層と上部層には古生代石炭紀前期を示すサンゴ化石などが含まれるが、下部には時代を示す化石が含まれていない。
写真 国府町三川の小八賀川河床に露出する荒城川層の枕状溶岩(扁平化した“枕”の間に石灰岩が挟まれている)
(撮影:小井土由光)
写真 荒城川層の枕状溶岩の“枕”(周囲が細粒部に囲まれている)
(撮影:小井土由光)
枕状溶岩
粘性の低い玄武岩質溶岩が水中を流れる際に、楕円体に近い形状をした“枕”あるいは“米俵”のように見える岩塊を積み上げたような産状を示すもので、個々の岩塊はガラス質の皮殻をもち、中心部に放射状の割れ目をともない、熱い溶岩が水に触れて急冷されたことでできる構造をもつ。
片理
結晶片岩に特徴的に表れ、柱状、板状、鱗片状などの結晶が一定方向に並ぶことで生じる縞状(線状片理)あるいは面状(面状片理)に表れる構造。
結晶片岩
広域変成作用により地下深部の高い圧力下で再結晶したことで雲母のような板状の鉱物などが方向性をもって配列し、片理をもつ板状に割れやすい変成岩の一種である。源岩の成分と変成条件により形成された特徴的な変成鉱物の名を冠して石英片岩や緑泥石片岩などと呼ばれたり、源岩の種類を冠して泥質片岩や砂質片岩などと呼ばれる。
千枚岩
細粒の堆積岩あるいは凝灰岩が広域変成作用を受けて形成される葉片状に割れやすい岩石で、泥質岩が圧力を受けた粘板岩(堆積岩)と結晶が明確に一定方向に並ぶ結晶片岩(変成岩)との中間にあり、変化度の最も低い変成岩である。

地質年代