項目 チャート石灰岩互層 ちゃーとせっかいがんごそう
関連項目 凡例解説>美濃帯堆積岩類>チャート石灰岩互層
地点 美濃市保木脇(ほきわき)横持(よこもち)
見学地点の位置・概要    国道156号の新立花橋付近における長良川は、南東へ向かって大きく蛇行して流れている。その蛇行部の東端にあたる左岸(東岸)には杏谷(あんずだに)・漆谷(うるしだに)と呼ばれる2つの支谷が東から長良川に注いでいる。国道の対岸を走る県道324号白山美濃線の杏谷付近から河川敷の草地を長良川の河床まで進むと、杏谷が長良川に流れ込む位置にチャート石灰岩互層が露出している。ただし、長良川が増水すると水没してしまう場合がある。
見学地点の解説    この付近には数cmほどの幅で繰り返しているチャート層が広く分布し、それらの一部としてチャート石灰岩互層が分布している。厚さがともに数~数十cm で、暗灰色のチャート層と白色の石灰岩層という明瞭な色の違いをなして交互に繰り返し、ともに褶曲したり断層で変位したりしている。これらは交互に順に重なったように見えるために互層と呼ばれるが、両者の境界部は明瞭な境界面(地層面)をなして分布しているわけではなく、石灰岩が波打つように膨縮したり尖滅したりして厚さを変えながら分布しており、チャート層の間に注入されたり、破断したチャート層内を充填しているような産状を示している。なお、チャート層には白色部もみられるが、石灰岩とは硬さがまったく異なることで区別できる。
ジオの視点    チャートは放散虫などの微小生物が深海底に堆積してできた地層であるのに対して、石灰岩は深海底では溶けてしまい地層としては残らない。こうした形成条件のまったく異なる岩石が交互に積み重なるように見える産状の形成過程はまだ正確にはよくわかっていない。ただ、石灰岩が溶けずに残されるような環境下を想定せざるを得ないこと、二次的に流動変形しやすい性質をもつ石灰岩が注入されたような産状を示すことなどから、チャートが付加される過程でできた変形構造や層状チャートの層間を利用して石灰岩が後生的に充填してきた可能性がある。
写真 美濃市保木脇横持の長良川河床に見かけ上の互層をなして露出するチャート石灰岩互層
(撮影:小井土由光)
写真 美濃市保木脇横持の長良川河床に不規則な形状で露出するチャート石灰岩互層
(撮影:小井土由光)
放散虫
海生の動物プランクトンとして先カンブリア時代から現在に至るまで生息している単細胞生物で、珪酸成分からなる0.1~0.2mmほどの大きさの骨格を持ち、そのため微化石として残されていることが多い。生息した時代により骨格の形態が異なり、その変化が速いために重要な示準化石となる。多くのチャートは放散虫骨格の堆積によって形成されており、それをフッ酸(HF)で腐蝕させた不溶残渣から実体顕微鏡下で放散虫を取り出し、走査型電子顕微鏡を用いて骨格の形態や微細な構造を観察する技術が1980年代になってから確立し、それにより美濃帯堆積岩類では薄いチャート層の単位で形成時代がなされ、それまでおもにフズリナ化石などで決められていた時代とは比べものにならない精度で時代決定がなされるようになった。こうした状況を「放散虫革命」という。




地質年代