項目 メランジュ めらんじゅ
関連項目 凡例解説>美濃帯堆積岩類>メランジュ
地点 郡上市美並町苅安(かりやす)
見学地点の位置・概要    長良川鉄道の美並苅安駅からみて長良川対岸にあたる位置に「遊遊ふれあい広場」と呼ばれる広い河川敷があり、その北端部(最上流部)で支流の粥川が長良川に注いでいる。その合流点付近に美濃帯堆積岩類のメランジュが広く露出している。
見学地点の解説    数mを超える大きな岩塊から1cm以下の小さな岩片までさまざまな大きさの岩石が泥岩からなる基質中に混じり合っている。基質は葉片状に割れて、全体として北東~南西方向に伸びている。含まれる岩塊・岩片の多くは砂岩であり、さまざまな形態で含まれ、基質の黒色をなす泥岩に近い暗灰色をなすが、割れ目が少なく塊状であることで基質と明瞭に区別できる。砂岩に比べて数は少ないが、数mを超す大型のチャート岩塊も含まれており、やはり暗灰色をなすために基質と区別しにくいが、基質に比べて大きく割れている。これらの岩塊・岩片は同じ方向に配列して北西側に急傾斜している。なお、ここではメランジュを貫く幅数十cm~1mの安山岩の岩脈が小規模にいくつか見られ、それらの貫人時期は白亜紀末以降と考えられている。
ジオの視点    メランジュはもともとは混合を意味するフランス語であり、いろいろな種類の岩石が複雑に混じりあった地質体を指し、プレートの沈み込みにともなう構造運動で変形した岩石類にあてはめて用いることが多い。美濃帯堆積岩類においては、泥岩の基質中に石灰岩・緑色岩・チャート・珪質泥岩・砂岩などからなるさまざまな大きさの礫あるいは岩塊を異地性岩体として数多く含む地質体である。海洋プレート上に載った堆積物が海溝部で付加される過程で高い間隙水圧をもった泥が地層の間に注入しながら破壊して形成されると考えられている。
写真 郡上市美並町苅安の長良川河床に露出するメランジュ中の砂岩塊(さまざまな形と大きさに破断され、一定方向に並んでいる)
(撮影:小井土由光)
写真 郡上市美並町苅安の長良川河床に露出するメランジュ中のチャート岩塊(中央にあるやや明るい暗色部で、両側に暗色の泥質基質部がある)
(撮影:小井土由光)
美濃帯堆積岩類
美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。
異地性岩体
一般には形成された場所と異なる場所に存在する地質体をいうが、付加体堆積物において、海洋プレートで運ばれて海溝部で付加された火山岩類、石灰岩、チャートなどを指す。



地質年代