項目 大滝鍾乳洞 おおたきしょうにゅうどう
関連項目 事項解説>地形・鍾乳洞>鍾乳洞>大滝鍾乳洞
地点 郡上市八幡町安久田(あくた)2298
見学地点の位置・概要    八幡町吉野において国道156号から千虎(ちとら)川沿いに県道328号安久田吉野線をたどるルートと、同じく八幡町穀見において国道156号から「公団幹線林道(旧名)八幡-下呂線」で安久田から縄文洞を経て入るルートがある。いずれのルートにも案内指示がある。
見学地点の解説    郡上市八幡町から和良(わら)町にかけての地域には美濃帯堆積岩類石灰岩が帯状に分布しており、地下には大小あわせて35洞にもなるとされる鍾乳洞が形成されている。大滝鍾乳洞はそれらの中の一つとして1969(昭44)年に発見され、東西方向に約270m,南北方向に約40m、高低差約100mの範囲に大きく4段にわたり広がっている鍾乳洞である。この鍾乳洞は断層に沿って水が集中して流れて大きな滝を地下に形成していることを特徴としており、なかでも最奥部の地下60mの位置にある“大滝”は約30mの落差をもち、豊富な水量を誇っており、観光洞としてのこの鍾乳洞のシンボルとなっている。全体に洞内を流れる水量が多く、泥が洗い流されて白色の透明度の高い鍾乳石類が多くみられる。
ジオの視点    県内に分布する鍾乳洞は、いずれも美濃帯堆積岩類を構成する石灰岩の岩体内に形成されている。しかし、石灰岩の分布域であればどこにでも鍾乳洞が形成されるわけではない。地下で石灰岩を溶かす地下水の水脈がなければ形成されない。すなわち石灰岩の中にそれなりの規模で割れ目系がなければならない。それに地下水の水位が絡んで何段にもわたる洞窟が形成されることになる。
写真 大滝鍾乳洞の入口
(撮影:鹿野勘次)
美濃帯堆積岩類
美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。
石灰岩
美濃帯堆積岩類の中には、金生山の赤坂石灰岩、舟伏山地域の舟伏山石灰岩、石山地域の石山石灰岩などと呼ばれる比較的大きな石灰岩の岩体が分布しており、石灰石資源として採掘されていたり、場所によっては鍾乳洞地帯を形成している。古生代のペルム紀に形成された緑色岩(玄武岩質火山岩類)からなる海山を覆うサンゴ礁を構成していた石灰質生物の遺骸が集積して形成されたものであり、一般に緑色岩と密接にともなって美濃帯堆積岩類の中では最も古い時期に形成された岩石である。



地質年代