項目 毘沙門岳火山 びしゃもんだけかざん
関連項目 凡例解説>第四紀火山>白山火山列>毘沙門岳火山
地点 郡上市高鷲町大鷲(おおわし)
見学地点の位置・概要    毘沙門岳火山は、長良川鉄道の終点北濃駅の北西にある毘沙門岳(標高1,385m)を中心に、東西約1㎞、南北約2㎞の範囲に小規模に分布している火山である。高鷲町大鷲付近あるいは東海北陸自動車道の高鷲IC付近などからドーム状の形をした山体として遠望できる。
見学地点の解説    毘沙門岳火山は総体積約3km3のきわめて小規模な火山体である。凝灰角礫岩などからなる火山性砕屑岩層を境に、それより下位に2枚の安山岩質溶岩層、上位に2枚の安山岩質溶岩層と1枚のblock and ash flow堆積物に区分されている。北側に分布する大日ヶ岳火山の噴出物を覆っている。
ジオの視点    毘沙門岳火山は白山火山両白丸山火山とともに白山火山列に属し、その最南端にある。九頭竜火山列に属する大日ヶ岳火山や烏帽子・鷲ヶ岳火山よりもかなり新しい時期の30万年前ごろ(27万~32万年前)に数万年程度の短期間で形成された火山体である。小規模な火山体であるためあまり明瞭ではないが、若い火山体であるために形成時の形態をそのまま残した山体を見せており、浸食・崩壊がかなり進んだ大日ヶ岳火山や烏帽子・鷲ヶ岳火山とはかなり異なっている。
写真 郡上市高鷲町大鷲からみた毘沙門岳火山の山体
(撮影:小井土由光)
写真 東海北陸自動車道の高鷲ICからみた毘沙門岳火山の山体
(撮影:小井土由光)
block and ash flow堆積物
高温の溶岩ドームや溶岩流の一部が崩落することで起こる小型の火砕流により形成される堆積物で、いろいろな大きさの溶岩の岩塊、角礫、岩片などからなる。火山体の斜面上にあって、溶岩自体の爆発や重力などにより崩落を起こすことで発生する。1991(平3)年に雲仙普賢岳で発生した火砕流はこのタイプであり、火砕流の噴火タイプとしてはメラピ型火砕流と呼ばれることもある。
大日ヶ岳火山
長良川の最上流部域にあって、大日ヶ岳(標高1709m)を中心に南北約8km、東西約10kmに広がる火山体であり、復元総体積は約16km3とされている。おもに比較的小規模な安山岩質の溶岩層からなることを特徴としている。山頂部付近の2ヶ所に火口跡と推定されている凹地があり、すべてそれらから噴出したと考えられている。火砕流堆積物や火山角礫岩などの火砕岩は少ない。九頭竜火山列の火山体の中では比較的若い時期に活動した火山である。
白山火山
最高峰の御前峰(ごぜんがみね)(標高2702m)と剣ヶ峰(標高2677m)、大汝峰(おおなんじみね)(標高2684m)をあわせて「白山三峰」といい、それらを中心とする安山岩質の溶岩、火砕流堆積物などからなる火山体である。ただし、山頂部付近でも標高2400m付近まで基盤岩類が分布しており、それらの上にきわめて薄く噴出物が覆っているに過ぎない。加賀室火山(約42万~32万年前)、古白山火山(約13万~6万年前)、新白山火山(約4万年前以降)の3つの活動時期に分けられるが、前二者は現在の主峰から離れた周囲の尾根上に残っているだけで、ほとんどが削剥されてしまっている。とりわけ古白山火山は、現在の大汝峰の北側にあたる石川県側の地獄谷付近にあたる位置に標高3000mに達する山頂をもつ成層火山体を形成していたと考えられている。新白山火山は現在の主峰を中心とした火山体を形成しており、岐阜県側では、約4400年前に山頂付近の東側が大規模に崩落したことで馬蹄形の凹地が形成され、その崩落で発生した岩屑なだれによる堆積物が大白川岩屑流堆積物を形成し、約2200年前には山頂部付近から溶岩が東方へ流下して白水滝溶岩を形成し、その末端付近に白水滝がある。最新の活動については事項解説『災害』の項目「白山火山1659年噴火」を参照のこと。
両白丸山火山
白山火山の南方において九頭竜火山列に属する銚子ヶ峰火山の南東側にあり、丸山(標高1786m)・芦倉山(標高1716m)にまたがって分布する火山体である。ほとんど安山岩質の溶岩類からなり、小規模な火砕流堆積物をともなう。ただし、公表された論文がほとんどないため、詳細は不明である。
白山火山列
岐阜・石川県境にある白山(標高2702m)を中心とする両白山地北部に分布する火山群のうち、更新世中期以降に形成された火山群で、北から南へ向かって戸室火山・白山火山・両白丸山火山・毘沙門岳火山という4つの火山体があり、これらのうち戸室火山を除いて岐阜県地域に分布する。なお、鮮新世~更新世前期に形成され火山群を九頭竜火山列といい、それは北西~南東方向に並ぶ。
烏帽子・鷲ヶ岳火山
郡上市と高山市の境界にまたがり、南北約33km、東西約18kmの広範囲に広がる火山体であり、復元総体積は約66km3とされている。その中央部に南北に流れる一色川により大きく烏帽子岳(標高1625m)と鷲ヶ岳(標高1671m)の山体に分けられており、多くの谷により開析されているため、火山地形はほとんど残されていない。九頭竜火山列における他の火山が溶岩層を主体とする成層火山を形成しているのに対して、火砕流や岩屑なだれによる堆積物をともなう点がやや異なる。大規模な山体崩壊堆積物と水底堆積物を境に古期火山と新期火山に分けられており、前者はおもに山体の西部から北部にかけて分布し、阿多岐層を覆い、角閃石斑晶に富む安山岩質溶岩と同質の火砕流堆積物などからなる。後者はおもに山体の南部から東部にかけて分布し、前者に比べて角閃石斑晶の少ない安山岩類からなり、複数枚の溶岩層やblock and ash flow堆積物などで構成され、それらを覆う土石流堆積物などが山麓部に分布する。
地質年代