項目 阿多岐層 あたぎそう
関連項目 凡例解説>第四紀堆積層>その他の地域>阿多岐層
地点 郡上市白鳥町阿多岐
見学地点の位置・概要    県道316号鮎立恩地線は、鷲ヶ岳(標高1,672m)の西麓を高鷲町鷲見(わしみ)から白鳥町野添へ大きな曲線を描きながらもおおよそ南北に走っている。その途中に阿多岐地区があり、鷲ヶ岳から西流する阿多岐川に沿って盆地状の緩斜面を作っている。県道はその中を貫き、阿多岐ダム沿いに作られた阿多岐トンネルを経て白鳥町中心部へ向かう。阿多岐トンネルの北側出口から北東500mほどの地点にT字路があり、そこを板倉川南岸に沿って進むと、南側の山腹に建設会社の車庫・倉庫があり、その裏手に白色の阿多岐層が見える。
見学地点の解説    倉庫・車庫前の広場を奥へ進むときれいな阿多岐層の露出面が現われる。白色の珪藻土層と淡赤紫色の火山灰層がリズミカルに繰り返しながら互層をなして右へ傾斜して露出しており、左側に詳しい解説板が立っている。倉庫・車庫の裏手にも大きな崖があり、そこでは白色の珪藻土層が乱されて堆積しており、複雑な模様をなして見られる。ただし、倉庫・車庫周辺は私有地であることを十分に理解して見学しなければならず、現場への立ち入りには必ず許可を得る必要があり、防犯管理上の理由から立入禁止となる場合には道路上からの観察となる。なお、ここの阿多岐層に含まれる珪藻土層は良質の資源として利用されていたことがあり、かつては板倉川の河岸から横穴の坑道が掘られて良質の珪藻土が採掘されていた。
ジオの視点    阿多岐層は、長良川の最上流部にあたる烏帽子・鷲ヶ岳火山および大日ヶ岳火山の山麓において、見かけ上は両火山体を構成する火山岩類の基底層のように点在して分布する。層厚は最大で40mほどであり、凝灰質砂岩・シルト岩などの湖沼成の堆積物からなり、場所により珪藻土層をともなう。珪藻土は、藻類の一種である珪藻が海や湖沼などで大量に繁殖して死滅し、その死骸が水底に沈殿したものであり、ここでは烏帽子・鷲ヶ岳火山の活動と関連して形成された湖沼に沈殿したものと考えられている。
写真 阿多岐板倉に露出する阿多岐層(白色の珪藻土層が乱されて堆積している
(撮影:小井土由光)
写真 阿多岐層中の珪藻土(白色)と火山灰層(淡赤紫色)のリズミカルな互層
(撮影:勝田長貴)
烏帽子・鷲ヶ岳火山
郡上市と高山市の境界にまたがり、南北約33km、東西約18kmの広範囲に広がる火山体であり、復元総体積は約66km3とされている。その中央部に南北に流れる一色川により大きく烏帽子岳(標高1625m)と鷲ヶ岳(標高1671m)の山体に分けられており、多くの谷により開析されているため、火山地形はほとんど残されていない。九頭竜火山列における他の火山が溶岩層を主体とする成層火山を形成しているのに対して、火砕流や岩屑なだれによる堆積物をともなう点がやや異なる。大規模な山体崩壊堆積物と水底堆積物を境に古期火山と新期火山に分けられており、前者はおもに山体の西部から北部にかけて分布し、阿多岐層を覆い、角閃石斑晶に富む安山岩質溶岩と同質の火砕流堆積物などからなる。後者はおもに山体の南部から東部にかけて分布し、前者に比べて角閃石斑晶の少ない安山岩類からなり、複数枚の溶岩層やblock and ash flow堆積物などで構成され、それらを覆う土石流堆積物などが山麓部に分布する。
大日ヶ岳火山
長良川の最上流部域にあって、大日ヶ岳(標高1709m)を中心に南北約8km、東西約10kmに広がる火山体であり、復元総体積は約16km3とされている。おもに比較的小規模な安山岩質の溶岩層からなることを特徴としている。山頂部付近の2ヶ所に火口跡と推定されている凹地があり、すべてそれらから噴出したと考えられている。火砕流堆積物や火山角礫岩などの火砕岩は少ない。九頭竜火山列の火山体の中では比較的若い時期に活動した火山である。



地質年代