項目 ひるがの湿原 ひるがのしつげん
関連項目 事項解説>景勝地・景観>湿原>ひるがの湿原
地点 郡上市高鷲町ひるがの
見学地点の位置・概要    国道156・158号(重複区間)が長良川を最上流部までさかのぼり、分水嶺の峠を越えたところに広がる高原がひるがの高原である。この高原のかなり広い範囲にかつて広がっていた湿原がひるがの湿原であるが、開発が進んだことでその分布域がかなり縮小している。分水嶺公園内の散策路を北東端まで行くと浅い水路があり、その壁にひるがの湿原に堆積した黒色の泥炭層がみられる。
見学地点の解説    ひるがの湿原は、寒冷で常に湿っているために植物遺体が分解されずに泥炭となり、それが厚いところで2mほどに堆積して形成された高層湿原である。泥炭層の下部ほど炭化の程度が進み、泥炭層中から得られる炭化物の年代値と花粉の種類から、最下部(約6,680年前)から中部(約4,000年前)までは現在よりもわずかに温暖であり、その後しだいに冷涼化していき、上部(約1,300年前)になるとほぼ現在の気候に近づいていったことがわかっている。泥炭層の上にかつて広く分布していた湿原植物は分水嶺公園の東側にあるひるがの湿原植物園(管理者:高鷲観光協会、季節限定(4~10月)で有料公開)で保護されているほか、国道の両側に湿原の名残りとしてミズバショウ群落がいくつか点在している。
ジオの視点    ひるがの高原は大日ヶ岳火山の山体崩壊によりもたらされた堆積物によりその東麓に作られた緩傾斜地である。その一部に湖(沼地)が形成され、そこに標高が高い(寒冷地である)ことで形成された泥炭湿地がひるがの湿原である。
写真 ひるがの湿原に分布する泥炭層
(撮影:小井土由光)
写真 ひるがの湿原のミズバショウ群落
(撮影:木澤慶和)
高層湿原
湿った低温の土壌に形成され、枯死した植物の分解が進まないために泥炭として堆積している草原を湿原といい、周囲に対する高さにより低層・中間・高層湿原の3タイプに区分される。それらは構成植物や生態条件などの違いにより形成されていき、高層湿原は、低温で周囲からの流水が少なく、栄養塩類が少ないことで、ミズゴケなどの植物が泥炭化して中央部に高まりができる。
大日ヶ岳火山
長良川の最上流部域にあって、大日ヶ岳(標高1709m)を中心に南北約8km、東西約10kmに広がる火山体であり、復元総体積は約16km3とされている。おもに比較的小規模な安山岩質の溶岩層からなることを特徴としている。山頂部付近の2ヶ所に火口跡と推定されている凹地があり、すべてそれらから噴出したと考えられている。火砕流堆積物や火山角礫岩などの火砕岩は少ない。九頭竜火山列の火山体の中では比較的若い時期に活動した火山である。



地質年代