項目 烏帽子・鷲ヶ岳火山 えぼし・わしがたけかざん
関連項目 凡例解説>第四紀火山>九頭竜火山列>烏帽子・鷲ヶ岳火山
地点 郡上市高鷲町 上野高原
見学地点の位置・概要    烏帽子・鷲ヶ岳火山は、長良川をはさんで大日ヶ岳火山の反対側にある火山体であるが、大日ヶ岳火山よりもさらに開析がすすみ、火山体としての形態はまったくといってよいほどない。とりわけ山体の中央部を北流する一色川により大きく西側(鷲ヶ岳側)と東側(烏帽子岳側)に分けられている。上野高原を貫いて走る県道321号ひるがの高原線(やまびこロード)から「牧歌の里」南東側に広がる畑地の中を見通しの良い場所まで進むと、左側に烏帽子岳の峰、右側に鷲ヶ岳の峰が遠望できる。
見学地点の解説    烏帽子・鷲ヶ岳火山は烏帽子岳(標高1,625m)と鷲ヶ岳(標高1,672m)を中心に、東西約17 ㎞、南北約29 ㎞というかなり広範囲に標高600~900m以上の高さに分布する火山体である。おもに安山岩質の火山岩類からなるが、溶岩層を主体とする大日ヶ岳火山と異なり、全体に火砕流堆積物や岩屑なだれ堆積物が多い。古期と新期に分けられ、古期の火山岩類には角閃石の斑晶が多く含まれることを特徴としている。古期では121~115 万年前、新期では119~107 万年前という形成年代値がそれぞれ得られており、約100万年前を示す大日ヶ岳火山よりもやや古い時期に活動した火山であることから、それだけ火山体の浸食・崩壊が進んでいる。
ジオの視点    烏帽子・鷲ヶ岳火山は、御嶽火山乗鞍火山などにくらべて古い火山体であるために、大日ヶ岳火山と同様に、一定の範囲に火山岩類が分布して火山体の名残りの形態を残しているだけであり、火口跡や噴出物の形態などの明瞭な火山地形はまったく見られない。また、長い年月にわたる浸食により火山体がかなり解体され、山麓には土石流でもたらされた礫層からなる広い扇状地や深く刻まれた谷がみられる。
写真 郡上市高鷲町の上野高原からみた烏帽子・鷲ヶ岳火山の山体
(撮影:小井土由光)
大日ヶ岳火山
長良川の最上流部域にあって、大日ヶ岳(標高1709m)を中心に南北約8km、東西約10kmに広がる火山体であり、復元総体積は約16km3とされている。おもに比較的小規模な安山岩質の溶岩層からなることを特徴としている。山頂部付近の2ヶ所に火口跡と推定されている凹地があり、すべてそれらから噴出したと考えられている。火砕流堆積物や火山角礫岩などの火砕岩は少ない。九頭竜火山列の火山体の中では比較的若い時期に活動した火山である。
火砕流
火山噴火において噴煙と同じものが溶岩のように地面に沿って流れる現象である。噴煙の中には火山灰(ガラス片)のほかにマグマのかけらに相当する軽石や噴火の際に取り込まれる既存の岩石などが入っており、それらの固体をまとめて火山砕屑物といい、それらが火山ガス(ほとんど水蒸気)と混ざった状態で地表面に沿って流れる現象である。これによってもたらされた堆積物を火砕流堆積物という。火砕流はきわめて流動性に富む状態で運ばれるために、高温状態のまま高速で運ばれることになり、溶岩流などの噴火現象に比べるとはるかに危険な現象と理解しておかなければならない。
岩屑なだれ
水蒸気や空気などの気体と岩塊など固体破片の混合物が大規模に(体積で106m3以上 )高速で(速いもので150m/秒)斜面を流れ下る現象で、火山現象としてもみられるが、地震動で山体が崩壊して起こることもある。火砕流に似た現象であるが、火砕流はマグマ起源の物質を主体とする高温の流れであるのに対して、これは既存の物質からなる低温の流れである。気体が水に代わると泥流あるいは土石流となり、岩屑なだれが途中から河川の水を取り込んで泥流・土石流になることはよくある。
御嶽火山
岐阜・長野県境にあって南北約20km、東西約15kmの範囲に広がる山体をなす。それぞれ数万年ほどの活動期間をもつ古期御嶽火山と新期御嶽火山からなり、両者の間に約30万年にわたる静穏期があり、現在も約3万年にわたる静穏期にあたっている。
乗鞍火山
飛騨山脈に沿ってほぼ南北方向に配列する乗鞍火山列あるいは乗鞍火山帯と呼ばれる火山群の一つで、複数の火山体が集まって復元総噴出量約26km3の複合火山を形成している。活動時期から大きく約128万~86万年前に活動した古期乗鞍火山と約32万年前以降に活動した新期乗鞍火山に分けられており、前者には千町火山が、後者には烏帽子火山、高天ヶ原・権現池火山、四ツ岳火山、恵比寿火山がそれぞれ該当している。これらのうち権現池火山だけが最新の活動をしている。全体に火砕流堆積物や降下火砕堆積物などの火砕物が少なく、安山岩質ないしデイサイト質の厚い溶岩流が主体を占めることで特徴付けられ、基盤岩類の分布高度が標高2400mまで確認され、噴出物の厚さは600~700mほどしかない。
地質年代