項目 高山軽石層 たかやまかるいしそう
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地点 郡上市高鷲町 上野高原
見学地点の位置・概要    県道321号ひるがの高原線(やまびこロード)を「牧歌の里」入口から南西へ1kmほど進んだ地点に小さな十字路があり、そこを右折するとすぐ右側に黄褐色をなす土壌の崖がある。それらは上野高原を厚く覆って分布する火山灰層で、その中で地表から1.7~2m下に見られる茶褐色の火山灰層が高山軽石層である。
見学地点の解説    上野高原は烏帽子・鷲ヶ岳火山の北西麓に形成された崩壊堆積物からなる緩傾斜地である。そこを広く覆っている火山灰層は全体として赤土層をなし、岩相と構成鉱物から大きく3層に区分されている。これらは近傍にある大日ヶ岳火山や烏帽子・鷲ヶ岳火山に由来する噴出物ではなく、いずれもそれらの活動時期よりかなり若い時代に遠く離れた場所から飛来したものである。ただし、出所がわかっているのは中部層をなす厚さ30 ㎝ほどの茶褐色の火山灰層であり、それが高山軽石層である。1mmほどの金色に光る黒雲母が多く含まれていることを特徴としており、その特徴により容易に判別できる。
ジオの視点    高山軽石層は、北アルプス(飛騨山脈)の槍ヶ岳西方にある水鉛谷給源火道からもたらされた樅沢(もみさわ)岳火山に由来する火山灰層で、飛騨地方各地の古い河岸段丘の上や緩やかな山麓に分布している。多くは厚さ50cmほどで、キラキラと輝く黒雲母を多量に含む火山灰層で、同時に噴出した奥飛騨火砕流堆積物と同じ鉱物の特徴をもつ。通常の降下火砕堆積物は東方へ向かって飛ばされるが、それとは大きく異なる南西方へも飛んで郡上市の上野高原にも分布していることから、かなり大規模な噴火活動でもたらされた火山灰のようである。
写真 上野高原の畑地の下に分布する高山軽石層(中央の崖の中ほどに見える茶褐色部)
(撮影:小井土由光)
写真 高山軽石層の近接写真
(撮影:小井土由光)
烏帽子・鷲ヶ岳火山
郡上市と高山市の境界にまたがり、南北約33km、東西約18kmの広範囲に広がる火山体であり、復元総体積は約66km3とされている。その中央部に南北に流れる一色川により大きく烏帽子岳(標高1625m)と鷲ヶ岳(標高1671m)の山体に分けられており、多くの谷により開析されているため、火山地形はほとんど残されていない。九頭竜火山列における他の火山が溶岩層を主体とする成層火山を形成しているのに対して、火砕流や岩屑なだれによる堆積物をともなう点がやや異なる。大規模な山体崩壊堆積物と水底堆積物を境に古期火山と新期火山に分けられており、前者はおもに山体の西部から北部にかけて分布し、阿多岐層を覆い、角閃石斑晶に富む安山岩質溶岩と同質の火砕流堆積物などからなる。後者はおもに山体の南部から東部にかけて分布し、前者に比べて角閃石斑晶の少ない安山岩類からなり、複数枚の溶岩層やblock and ash flow堆積物などで構成され、それらを覆う土石流堆積物などが山麓部に分布する。
大日ヶ岳火山
長良川の最上流部域にあって、大日ヶ岳(標高1709m)を中心に南北約8km、東西約10kmに広がる火山体であり、復元総体積は約16km3とされている。おもに比較的小規模な安山岩質の溶岩層からなることを特徴としている。山頂部付近の2ヶ所に火口跡と推定されている凹地があり、すべてそれらから噴出したと考えられている。火砕流堆積物や火山角礫岩などの火砕岩は少ない。九頭竜火山列の火山体の中では比較的若い時期に活動した火山である。
水鉛谷給源火道
蒲田川左俣谷支流の水鉛谷の南側において奥丸沢花崗岩の中に径約600×500mの規模で楕円形をなして尖塔状の形態をとってそびえ立つ。おもに多斑晶質の花崗斑岩からなり、周縁部に流紋岩質凝灰岩、デイサイト質ないし安山岩質凝灰岩などが分布し、珪長質岩と苦鉄質岩が混ざって縞模様をなす部分も認められる。火山岩類については構成鉱物の化学組成などから奥飛騨火砕流堆積物と同源の産物であることが明らかにされている。
樅沢(もみさわ)火山
飛騨山脈の西鎌(にしかま)尾根から樅沢岳(標高2755m)周辺の山稜部に分布する奥飛騨火砕流堆積物がその南方で発見された水鉛谷給源火道から噴出したことが明らかにされ、この地域周辺に想定された火山体に対して命名されたものである。飛騨山脈が激しい隆起運動の場にあることで、その山体はほとんど削剥されてしまっているが、そこからは奥飛騨火砕流堆積物だけではなく、広範囲に降下火砕堆積物を飛ばしており、岐阜県側では高山軽石層、長野県側では「大町テフラ(クリスタルアッシュ)」と呼ばれる。
奥飛騨火砕流堆積物
飛騨山脈の樅沢(もみさわ)岳(標高2755m)周辺から南方へ蒲田(がまた)川流域や笠谷流域の山腹に分布し、水鉛谷給源火道から噴出して現在の地形に近い河谷に沿って流れた火砕流によりもたらされた堆積物である。推定分布面積70km2以上、推定総噴出量10km3以上、最大層厚約200mで、おもに流紋岩質の溶結凝灰岩からなり、含まれる結晶片は斜長石・石英・黒雲母に富み、柱状の角閃石や輝石をともなう。
地質年代