項目 烏帽子・鷲ヶ岳火山の火砕流堆積物 えぼし・わしがたけかざんのかさいりゅうたいせきぶつ
関連項目 凡例解説>第四紀火山>九頭竜火山列>烏帽子・鷲ヶ岳火山
地点 郡上市高鷲町鷲見(わしみ)
見学地点の位置・概要    県道452号惣則(そうのり)高鷲線は高鷲町大鷲(おおわし)から鷲見川に沿って東進し、途中で県道321号ひるがの高原線および県道316号鮎立恩地線との交差点を経て、高山市との境界にある峠を越えて一色川流域へと向かう。途中の交差点からかなりの距離があるが、峠の手前300mほどの道路沿いに烏帽子・鷲ヶ岳火山の火砕流堆積物が露出している。
見学地点の解説    淡赤紫色をなす基質中に灰色の岩塊を多数含んだ火山角礫岩であり、岩塊は多量の斜長石と大きな角閃石を含む安山岩溶岩からなり、基質部とよく似た岩質・岩相を示す。岩塊の多くは風化して軟化している角礫であり、最大で径1mほどである。含まれる岩塊が多種類ではなく、ほぼ同種の岩塊と判断されることから、泥流岩屑なだれによる堆積物ではなく、基質が淡赤紫色をなすことで熱い状態で運ばれてきた火砕流堆積物と考えられ、とりわけblock and ash flow堆積物と判断される。
ジオの視点    烏帽子・鷲ヶ岳火山を構成する火山岩類は全体に溶岩類よりも火砕流堆積物や岩屑なだれ堆積物を多く含む。実際に溶岩が露出していても、それが横方向に連続して分布することは少なく、火山角礫岩に含まれる巨大な岩塊である場合が多い。ただし、その火山角礫岩がマグマ起源の火山活動によりもたらされた火砕流堆積物であるのか、山体崩壊などでもたらされる岩屑なだれ・泥流堆積物であるのかを決めるにはかなり慎重な検討が必要になる。
写真 県道452号線沿いに露出する烏帽子・鷲ヶ岳火山の火砕流堆積物
(撮影:小井土由光)
写真 淡赤紫色の基質中に多量の安山岩質溶岩の岩塊を含んだ火砕流堆積物
(撮影:小井土由光)
泥流
礫、砂、泥などの砕屑物が水と混ざって流れ下る場合に、泥質分を多く含み、粗粒の礫質分の少ない流れを指す。礫質分が多いと土石流と呼ぶことがあるが、明確な境界があるわけではない。火山砕屑物が関与すると火山泥流と呼び、その場合には必ずしも泥質分が卓越しているとは限らず、土石流に近い状態もある。インドネシアの火山体周辺で頻発することでラハーという用語が同義語として使われることがある。水ではなく気体(空気)と混ざった流れの場合には岩屑なだれという。
岩屑なだれ
水蒸気や空気などの気体と岩塊など固体破片の混合物が大規模に(体積で106m3以上 )高速で(速いもので150m/秒)斜面を流れ下る現象で、火山現象としてもみられるが、地震動で山体が崩壊して起こることもある。火砕流に似た現象であるが、火砕流はマグマ起源の物質を主体とする高温の流れであるのに対して、これは既存の物質からなる低温の流れである。気体が水に代わると泥流あるいは土石流となり、岩屑なだれが途中から河川の水を取り込んで泥流・土石流になることはよくある。
火砕流
火山噴火において噴煙と同じものが溶岩のように地面に沿って流れる現象である。噴煙の中には火山灰(ガラス片)のほかにマグマのかけらに相当する軽石や噴火の際に取り込まれる既存の岩石などが入っており、それらの固体をまとめて火山砕屑物といい、それらが火山ガス(ほとんど水蒸気)と混ざった状態で地表面に沿って流れる現象である。これによってもたらされた堆積物を火砕流堆積物という。火砕流はきわめて流動性に富む状態で運ばれるために、高温状態のまま高速で運ばれることになり、溶岩流などの噴火現象に比べるとはるかに危険な現象と理解しておかなければならない。
block and ash flow堆積物
高温の溶岩ドームや溶岩流の一部が崩落することで起こる小型の火砕流により形成される堆積物で、いろいろな大きさの溶岩の岩塊、角礫、岩片などからなる。火山体の斜面上にあって、溶岩自体の爆発や重力などにより崩落を起こすことで発生する。1991(平3)年に雲仙普賢岳で発生した火砕流はこのタイプであり、火砕流の噴火タイプとしてはメラピ型火砕流と呼ばれることもある。
岩屑なだれ・泥流
水蒸気や空気などの気体と岩塊など固体破片の混合物が大規模に(体積で106m3以上 )高速で(速いもので150m/秒)斜面を流れ下る現象で、火山現象としてもみられるが、地震動で山体が崩壊して起こることもある。火砕流に似た現象であるが、火砕流はマグマ起源の物質を主体とする高温の流れであるのに対して、これは既存の物質からなる低温の流れである。気体が水に代わると泥流あるいは土石流となり、岩屑なだれが途中から河川の水を取り込んで泥流・土石流になることはよくある。
地質年代