項目 上麻生礫岩 かみあそうれきがん
関連項目 凡例解説>美濃帯堆積岩類>上麻生礫岩
地点 加茂郡七宗町野々古屋
見学地点の位置・概要    国道41号の中麻生交差点から町道を飛騨川対岸へと進み、橋から200mほど上流へ行くと駐車場と上麻生礫岩の解説掲示板・石碑がある。そこから整備されたコンクリートの階段を飛騨川河床へ下ると、河床の岩場に暗灰色の砂岩泥岩互層が分布しており、それを上流側に側壁伝いに進むと水面近くに上麻生礫岩が露出している。
見学地点の解説    上麻生礫岩は、砂岩泥岩互層の間に挟まれた4層の礫岩層として厚さ 3~10mで分布している。礫の大きさは最大で30㎝にもなり、数㎝のものが多く、不揃いである。礫の種類は、砂岩・泥岩・チャート・石灰岩などの亜角礫~亜円礫と花崗岩・片麻岩・ヒン岩・安山岩・オーソコーツァイトなどの円礫からなる。それらのうち片麻岩礫が約20億年前という日本最古の年代値を示すことが1970(昭45)年に発見・確認されたが、その礫自体は採取されてしまっており見ることはできない。片麻岩やオーソコーツァイトは先カンブリア時代に形成され、当時の大陸地域に分布していたものが礫となり、ジュラ紀後期美濃帯堆積岩類の中に流れこんできたものである。
ジオの視点    上麻生礫岩は、明らかに陸域から供給された粗粒の砕屑物の一つである。一般に、礫岩は供給源の地質環境を直接的に表わしているとともに、移動距離がそれほど遠くないことを意味するために、含まれる礫からは貴重な情報が得られる。とりわけ花崗岩や片麻岩、大陸地域にしか存在しないオルソコーツァイトの礫は、いずれも安定大陸の後背地に由来するものであり、その位置がそれほど離れていないことを示している。こうした礫岩は美濃帯堆積岩類の中にあっても他に例がなく、かなり特異な存在である。
写真 上麻生礫岩がある河床への下り口にある石碑
(撮影:小井土由光)
写真 上麻生礫岩
(撮影:小井土由光)
片麻岩
広域変成作用により形成された高い変成度をもつ粗粒の岩石で、苦鉄質鉱物の多い黒色縞と珪長質鉱物の多い白色縞からなる縞状構造をもつ。花崗岩質岩石を源岩とする正片麻岩と堆積岩類を源岩とする準片麻岩に分けられる。
オーソコーツァイト
大地が削られた砕屑物は長い時間をかけて風化作用を受けていく。それらのうち風化作用にきわめて強い石英粒は最後まで変化せずに残されていき、それが90%以上を占めることで形成されている砂岩をいう。こうした岩石を形成するためにはきわめて長い時間と変動の少ない安定した大地を必要とするため、先カンブリア時代の大陸地域でのみ生成される。それらはきわめて風化に強いことから、きれいに円磨された円礫として古生代以降の若い時代の地層に含まれていく。岐阜県では手取層群にしばしば見られる。
美濃帯堆積岩類
美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。 超丹波帯は、近畿地方において丹波帯(中部地方の美濃帯に相当)とその北側にある舞鶴帯と呼ばれる構造帯との間に存在し、丹波帯が中生代ジュラ紀に付加作用を受けて形成された付加体堆積物で構成されているのに対して、おもに古生代ペルム紀に付加作用を受けて形成された付加体堆積物で構成されている地質帯である。中部地方においては、美濃帯の北縁部で福井県の南条地域と岐阜県の高山市丹生川町地域で分布が確認されているだけである。


地質年代