項目 飛水峡 ひすいきょう
関連項目 事項解説>景勝地・景観>峡谷・瀑布>飛水峡
地点 加茂郡七宗町上麻生
見学地点の位置・概要    飛水峡は、白川町白川口付近から七宗町上麻生に至る飛騨川沿いの約12kmにわたり続く断崖の渓谷を指し、それに沿って走る国道41号の各所からその景観が楽しめる。また、国道41号から上麻生の麻生橋を渡り、狭小な道ではあるが対岸の町道沿いでも同様の景観が楽しめ、特にその途中にある「ロックガーデン」と呼ばれる広場では、峡谷の真上から断崖を眺めることができ、迫力のある景観が楽しめる。
見学地点の解説    飛水峡は、美濃帯堆積岩類のおもにチャートと砂岩からなる岩盤を飛騨川が深く下刻したことで形成された渓谷である。とりわけ堅硬なチャートの分布域で鋭く刻み込まれた流路を作っており、その両側に段丘状にチャートの岩盤が広がっている。飛騨川の水は、上流の上麻生ダムにより一旦は堰き止められることもあり、平常時は穏やかな流れであるが、洪水時の流れには迫力があり、雨量によっては国道が通行止めになるほど険しい峡谷となっている。
ジオの視点    下呂温泉付近より下流の飛騨川では、ほぼ全域にわたり峡谷が続いている。見かけ上その最下流部にある峡谷が飛水峡であり、それより下流は美濃加茂の盆地へ流れ出るようにみえる。しかし、実際には木曽川との合流点までかなり深い峡谷が続いていると考えてよい。それは川辺ダムと木曽川に設けられた今渡(いまわたり)ダムの湖水により消されてしまっている。
写真 七宗町上麻生勝(かち)における飛水峡の景観
(撮影:小井土由光)
写真 七宗町上麻生における飛水峡の景観
(撮影:小井土由光)
美濃帯堆積岩類
美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。




地質年代