項目 和田野礫岩 わだのれきがん
関連項目 凡例解説>美濃帯堆積岩類>礫岩
地点 関市上之保和田野
見学地点の位置・概要    津保川沿いに走る県道85号金山上之保線の和田野に上之保小学校があり、その西側に津保川に架かる和田野橋がある。その脇に簡単な案内掲示板があり、橋周辺の河床に和田野礫岩が広く露出している。
見学地点の解説    砂岩を基質として、その中に亜円礫~角礫をなす美濃帯堆積岩類を構成する岩石の礫を多量に含む。その礫構成は、砂岩・泥岩・チャート・石灰岩などさまざまな礫を含むもの、チャート礫だけからなるものなどいろいろであるが、花崗岩の礫は含まれていない。礫径は1㎝以下のものから10cmを超えるものまでさまざまであり、不揃いである。礫径や礫種が側方へ連続せず、砂岩層に漸移的に移り変わって接する。
ジオの視点    美濃帯堆積岩類における礫岩としては上麻生礫岩がよく知られており、それは明らかに陸域から供給された礫岩である。それに対して和田野礫岩は、海洋プレート上に形成されていた美濃帯堆積岩類が沈み込む際に角礫となって、あるいはすでに付加体となった地質体が海底地すべりなどで崩壊して角礫となって供給されたと考えられている礫岩である。ただし、漸移的に移り変わっていく砂岩層は陸側から供給された堆積物であり、礫種や礫径などに不均一な産状がみられることなどから、その形成過程が明確にわかっているわけではない。
写真 関市上之保和田野の津保川河床に露出する和田野礫岩(かなり多種類の礫で構成されている)
(撮影:小井土由光)
写真 関市上之保和田野の津保川河床に露出する和田野礫岩(大きな礫は石灰岩)
(撮影:小井土由光)
美濃帯堆積岩類
美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。
上麻生礫岩
美濃帯堆積岩類の礫岩の中で、明らかに陸域から供給された粗粒の砕屑物の一つである。この種の礫岩は供給源の地質環境を直接的に表わしているとともに、移動距離がそれほど遠くないことを意味するために、含まれる礫種からは貴重な情報が得られる。とりわけこの礫岩には花崗岩や片麻岩、大陸地域にしか存在しないオルソコーツァイト(正珪岩)の礫が含まれ、いずれも安定大陸の後背地に由来するものであり、その位置がそれほど離れていないことを示している。また、片麻岩礫の形成年代値が約19億年前という日本最古の年代値を示している。こうした点は美濃帯堆積岩類の中にあっても他に例がなく、かなり特異な存在である。



地質年代