項目 蜂屋累層 はちやるいそう
関連項目 凡例解説>新第三紀堆積岩類および火成岩類>瑞浪層群>蜂屋累層
地点 美濃加茂市蜂屋町広橋
見学地点の位置・概要    東海環状自動車道の美濃加茂ICから富加町方面へ向かう国道418号は、蜂屋交番のある上蜂屋東交差点で県道63号美濃加茂和良線と交差する。そこから県道63号線を300mほど北上すると島之洞公民館があり、そこのT字路を右折してしばらく北上すると、道路脇や周囲の山腹に似たような顔つきの岩石が露出してくる。これらすべてが蜂屋累層を構成する火山岩層であり、それらの中でT字路から1.4kmほど進むと広橋地区の集落が始まり、その道路右側に垂直の崖が露出している。
見学地点の解説    蜂屋累層は300m以上の厚さをもち、全体で6期にわたる火山活動ステージに区分されている。ここにはそれらの中ほどにあたる第3期にあたる火山岩層が分布しており、火山角礫岩層が約20mの厚さで凝灰質砂岩層の上に重なって分布している。この火山角礫岩層は多くの岩塊を含み、それらのほとんどはさまざまな安山岩類や玄武岩類であり、わずかに美濃帯堆積岩類の砂岩やチャート、濃飛流紋岩、花崗斑岩、下位層の凝灰質砂岩なども含まれている。下位の砂岩層は一部に火山岩片などからなる角礫岩層を挟み、結晶片や火山性砕屑物からなる粗い砂岩を主体とし、明らかに水域に堆積したことを示すラミナ(葉理)構造をもつ。上位に重なる火山角礫岩層は砂岩層をおおよそ水平に覆っているようにみえるが、部分的には砂岩層を削り込んで重なっており、火山角礫岩層が火山活動にからむ運動をともなって堆積したことを示している。
ジオの視点    蜂屋累層は、美濃加茂・可児地域に分布する瑞浪層群のうち最下部層を構成し、美濃加茂市の南部地域に広く分布する。おもに安山岩質~玄武岩質の火砕岩・水中自破砕溶岩・貫入岩などからなり、凝灰質砂岩や凝灰質シルト岩などの湖沼性堆積岩層をともなう。火砕岩類などをもたらした火山活動は浅い水中で起こり、火砕岩類のほとんどはマグマ水蒸気爆発により形成されたと考えられている。
写真 美濃加茂市蜂屋町広橋において凝灰質砂岩層を覆う火山角礫岩層
(撮影:小井土由光)
写真 蜂屋累層の火山角礫岩層
(撮影:小井土由光)
美濃帯堆積岩類
美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。
マグマ水蒸気爆発
マグマが地下浅所で地下水と、あるいは地表で海水や湖水と接触することで大量の高圧水蒸気が発生し、それが爆発の原因となる火山噴火の一種で、放出物に急冷されたマグマ破片が含まれることで、単なる水蒸気爆発とは異なり、規模も大きくなる。



地質年代