項目 蜂屋累層の火山角礫岩 はちやるいそうのかざんかくれきがん
関連項目 凡例解説>新第三紀堆積岩類および火成岩類>瑞浪層群>蜂屋累層
地点 美濃加茂市蜂屋町広橋
見学地点の位置・概要    蜂屋町広橋における蜂屋累層の“岩壁”と同一の火山角礫岩層が、その200mほど南においてカーブを描いて急坂を上る道路に沿って露出している。ここでは高低差のある道路に沿って火山角礫岩層の内部を広く、詳しく観察できる。
見学地点の解説    全体に黒色をなし、少ない基質部の中にさまざまな大きさの岩塊が多量に含まれる火山角礫岩からなる。含まれる岩塊のほとんどは安山岩質あるいは玄武岩質の溶岩の角礫であり、珪化木や基盤にあたる美濃帯堆積岩類の砂岩やチャートの角礫も含まれている。露出面全体が同じように見える火山角礫岩であっても、角礫の分布状態が周囲と異なる部分があり、その境界をたどるとそれが巨大なブロックとして周囲の火山角礫岩の中に含まれている様子も見られる。ただし、いずれも似たような火山角礫岩であり、巨大なブロックの場合には見た目だけではどちらが本体の火山角礫岩とであるのかわからないこともある。また、すべて同一の溶岩片だけからなる自破砕溶岩が火山角礫岩のブロックとして含まれている。
ジオの視点    火山灰などが作る基質部の中に火山岩の岩塊・破片が含まれる岩石のうち、岩塊・破片が相対的に多いものを火山角礫岩といい、逆に基質部が多いものを凝灰角礫岩という。注意しなければならないのは、これらの名称が成因を問わずに付けられる点である。火山の爆発的な噴火で山体を壊してもたらされたり、火砕流の噴出にともなってもたらされたり、泥流としてもたらされたり、さまざまな成因をもつ可能性がある。それを特定するためには角礫の種類や基質部の組成などさまざまな検討を必要とし、見た目の状況だけでの判断はむずかしい。
写真 美濃加茂市蜂屋町広橋に露出する蜂屋累層の火山角礫岩
(撮影:小井土由光)
写真 火山角礫岩中の巨大ブロックの境界
(撮影:小井土由光)
美濃帯堆積岩類
美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。
自破砕溶岩
溶岩の表面が固結した後に固結部が破砕されてできた溶岩で、水中に噴出した溶岩でしばしば見られる。水中で急冷固結した溶岩が周囲の水の気化にともなう膨張圧などで激しく破砕されることで形成される。通常の火山活動で地表に堆積した火山角礫岩と似た岩相になるが、破砕されたものがすべて同質の岩石からなるという特徴をもつ。
火砕流
火山噴火において噴煙と同じものが溶岩のように地面に沿って流れる現象である。噴煙の中には火山灰(ガラス片)のほかにマグマのかけらに相当する軽石や噴火の際に取り込まれる既存の岩石などが入っており、それらの固体をまとめて火山砕屑物といい、それらが火山ガス(ほとんど水蒸気)と混ざった状態で地表面に沿って流れる現象である。これによってもたらされた堆積物を火砕流堆積物という。火砕流はきわめて流動性に富む状態で運ばれるために、高温状態のまま高速で運ばれることになり、溶岩流などの噴火現象に比べるとはるかに危険な現象と理解しておかなければならない。
泥流
礫、砂、泥などの砕屑物が水と混ざって流れ下る場合に、泥質分を多く含み、粗粒の礫質分の少ない流れを指す。礫質分が多いと土石流と呼ぶことがあるが、明確な境界があるわけではない。火山砕屑物が関与すると火山泥流と呼び、その場合には必ずしも泥質分が卓越しているとは限らず、土石流に近い状態もある。インドネシアの火山体周辺で頻発することでラハーという用語が同義語として使われることがある。水ではなく気体(空気)と混ざった流れの場合には岩屑なだれという。

地質年代