項目 平牧累層の堆積構造 ひらまきるいのたいせきこうぞう
関連項目 事項解説>化石>瑞浪層群の化石>平牧動物化石群
地点 可児市大森
見学地点の位置・概要    可児市の市街地へ向かって南方から大森川が、南東方から久々利(くぐり)川がそれぞれ流れている。それぞれの流域にある大森地区と二野(にの)地区の間を短いトンネルで結ぶ市道がある。この道は東海自然歩道にあたり、トンネルより南側の道路沿いに平牧累層の上部層が露出しており、特に大森川に近い部分で道路に沿って横長に広い露出が見られる。
見学地点の解説    ここにはおもに凝灰質砂岩層および礫岩層が互層をなして分布している。砂岩層は、白色をなした細粒のものもあるが、ほとんどはかなり粗粒であり、礫岩層に移り変わっていることも多い。砂岩層の砂粒はおもに火山噴出物(結晶片など)に由来しており、かなり明瞭な斜交・平行ラミナ(葉理)構造がみられ、水流のある環境下で堆積した地層であることを示している。ここでは見られないが、トンネル付近では暗色の凝灰岩層もみられ、火山噴出物が水に流されたことで細粒部(凝灰岩層)と粗粒部(砂岩層)に分かれたものと考えられている。礫岩層はほとんど径1~3cmの亜円礫からなり、それらは下位層の蜂屋累層の火山岩類や基盤をなす美濃帯堆積岩類の砂岩や泥岩などからなる。
ジオの視点    大森地区から二野地区にかけての地域はかつて可児郡平牧村と呼ばれた地域で、ここに分布する地層に対して昔の地名にちなんで『平牧層』と命名された。この平牧層は、現在では平牧累層としてこの地域に分布する瑞浪層群の最上部層と位置付けられており、約1,800万年前に火山活動が活発となり、おもにその火山噴出物が浅い湖沼に堆積したことで形成された地層である。ここに多数の植物化石や動物化石が含まれており、とりわけ動物化石は「平牧動物群」と呼ばれ、ゾウ・サイ・バク・ウマ・シカなどの哺乳動物化石が知られている。
写真 可児市大森に露出する平牧累層の凝灰質砂岩に見られるラミナ(葉理)構造
(撮影:小井土由光)
写真 可児市大森に露出する平牧累層の凝灰質砂岩と礫岩の互層
(撮影:小井土由光)
平牧累層
可児地域に分布する瑞浪層群のうち上部層を構成し、可児市から御嵩町へかけての地域に分布する。層厚は80m以上で、凝灰角礫岩や巨岩塊を含む凝灰岩などからなる下部層と凝灰質砂岩などからなる上部層に分けられている。ゴンフォテリウムというゾウやアンキテリウムという小型のウマなどの哺乳動物化石が産出したことで知られており、平牧動物化石群と呼ばれている。湖沼性の貝類化石や温暖性の植物化石が含まれている。
蜂屋累層
可児地域に分布する瑞浪層群のうち下部層を構成し、瑞浪層群全体としても最下部層をなす。美濃加茂市南部に広く分布し、おもに安山岩質~玄武岩質の火砕岩・水中自破砕溶岩・貫入岩などからなり、凝灰質砂岩や凝灰質シルト岩などの湖沼性堆積岩層をともなう。火山活動は浅い水中で起こり、火砕岩類のほとんどはマグマ水蒸気爆発により形成されたと考えられている。層厚は約300mである。
美濃帯堆積岩類
美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。


地質年代