項目 平牧累層の軽石質凝灰岩 ひらまきるいそうのかるいししつぎょうかいがん
関連項目 凡例解説>新第三紀堆積岩類および火成岩類>瑞浪層群>平牧累層
地点 可児市久々利(くぐり)
見学地点の位置・概要    県道84号土岐可児線と83号多治見白川線が交差する久々利交差点を83号線で南下し、久々利川を渡って200mほど進むと山沿いに進む道路と分かれる。山沿いの道路を250mほど進むと山際に小さな公園があり、そこに横穴が開いており、その両側に平牧累層が露出する。
見学地点の解説    ここに分布する地層は平牧累層の上部層であり、他の地域に分布する相当層と同じように火山噴出物を起源とする凝灰岩層ないし凝灰質砂岩層であり、とりわけ白色の軽石粒を多量に含む部分と含まないか少ない部分が互層をなして分布する。砂岩層の砂粒はあまり粗粒ではなく、顕著なラミナ(葉理)構造をともなわない。砂粒と軽石粒が混在している地層は、密度の異なる両者が分離しない程度に短時間の水域移動で形成されたことになり、火山物質の供給源に近い環境を示している。ここにある横穴と同じものは背後の山体に多数並んで掘られており、1944(昭19)年に三菱第四製作所の地下軍事工場として数百名以上の労働者による強制労働のもとで掘られた総延長8kmにも及ぶトンネルである。終戦でこの軍事工場建設は中止されたが、トンネルの掘削は秘密裏に進められたためその記録は残っていない。トンネルの天井は厚くて固い凝灰質砂岩からなり、崩れることがほとんどない。
ジオの視点    平牧累層が形成された時期に活発な火山活動があり、その噴出物が湖沼に堆積したことになるが、噴火口の位置は特定されていない。火山噴火がどこで生じたかは極めて重要なことであり、それを直接示す証拠が見つからない場合には噴出物の状況から判断することになる。それが水域に堆積したものであると水の働きが影響することもあり、噴出物の比重と水中での噴出物の挙動などいろいろな要素を考えていく必要がある。
写真 可児市久々利にある地下軍事工場跡の横穴
(撮影:小井土由光)
写真 地下軍事工場跡の横穴の周囲を作る軽石質凝灰岩(ねじり鎌の柄の長さ10cm)
(撮影:小井土由光)
平牧累層
可児地域に分布する瑞浪層群のうち上部層を構成し、可児市から御嵩町へかけての地域に分布する。層厚は80m以上で、凝灰角礫岩や巨岩塊を含む凝灰岩などからなる下部層と凝灰質砂岩などからなる上部層に分けられている。ゴンフォテリウムというゾウやアンキテリウムという小型のウマなどの哺乳動物化石が産出したことで知られており、平牧動物化石群と呼ばれている。湖沼性の貝類化石や温暖性の植物化石が含まれている。




地質年代