項目 巨岩塊凝灰岩 きょがんかいぎょうかいがん
関連項目
地点 可児郡御嵩町南山 南山公園
見学地点の位置・概要    国道21号の可児御嵩バイパスの南山団地入口交差点から南進すると、南山公園と南山台西団地の間を上っていく。その坂道の最高部に南山台東団地へ抜ける南山トンネルがあり、その直前に「みたけの森」へ入る林道がある。その林道を進むとすぐに切通しとなり、そこに巨岩塊凝灰岩が露出している。
見学地点の解説    切通しの南側(右側)では、かなり風化しているために不明瞭になっているが、軽石の小片を多数含む凝灰質砂岩からなる基質部の中に径1~2mの巨大な岩塊を含む凝灰岩層が露出している。巨岩塊は角礫~亜角礫をなして乱雑に分布しており、それらのほかに径10~20cmほどの礫や径1~2cmほどの小礫も多く含まれている。小礫のほとんどは美濃帯堆積岩類の泥岩やチャートなどであるが、それら以外は巨岩塊も含めて凝灰岩あるいは凝灰質砂岩であり、それらが周囲の基質部と区別しにくくしている。切通しの北側(左側)の壁は南側よりもさらに不明瞭であるが、巨岩塊凝灰岩の上に巨礫を含まない塊状の凝灰質砂岩が厚く分布している。それと同じものが林道をさらに奥へ進むと露出しており、さらに明瞭な層理構造をともなう凝灰質砂岩層となり、奥に進むとそれらに白色の細粒の凝灰岩層を挟むようになる。なお、露出面にほぼ沿って砕屑岩脈が貫いてやや複雑な産状を示す場所もある。
ジオの視点    巨岩塊凝灰岩は平牧累層の下部層に相当し、塊状の凝灰質砂岩から上位の地層は平牧累層の上部層にあたる。火山活動にともなって巨岩塊をもたらす堆積物としては、火砕流や火山泥流による堆積物、それらをもたらす火道域付近の構成物などが考えられる。ただし、それらを明確にするためにはかなり広域にわたり露出状態の良好な場所が必要であり、それがなかなか得られないことから、いずれの過程が該当しているかは明確になっていない。
写真 御嵩町南山の林道に露出する巨岩塊凝灰岩
(撮影:小井土由光)
写真 御嵩町南山の林道に露出する凝灰質砂岩層と凝灰岩層の互層
(撮影:小井土由光)
美濃帯堆積岩類
美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。
火砕流
火山噴火において噴煙と同じものが溶岩のように地面に沿って流れる現象である。噴煙の中には火山灰(ガラス片)のほかにマグマのかけらに相当する軽石や噴火の際に取り込まれる既存の岩石などが入っており、それらの固体をまとめて火山砕屑物といい、それらが火山ガス(ほとんど水蒸気)と混ざった状態で地表面に沿って流れる現象である。これによってもたらされた堆積物を火砕流堆積物という。火砕流はきわめて流動性に富む状態で運ばれるために、高温状態のまま高速で運ばれることになり、溶岩流などの噴火現象に比べるとはるかに危険な現象と理解しておかなければならない。
泥流
礫、砂、泥などの砕屑物が水と混ざって流れ下る場合に、泥質分を多く含み、粗粒の礫質分の少ない流れを指す。礫質分が多いと土石流と呼ぶことがあるが、明確な境界があるわけではない。火山砕屑物が関与すると火山泥流と呼び、その場合には必ずしも泥質分が卓越しているとは限らず、土石流に近い状態もある。インドネシアの火山体周辺で頻発することでラハーという用語が同義語として使われることがある。水ではなく気体(空気)と混ざった流れの場合には岩屑なだれという。
平牧累層
可児地域に分布する瑞浪層群のうち上部層を構成し、可児市から御嵩町へかけての地域に分布する。層厚は80m以上で、凝灰角礫岩や巨岩塊を含む凝灰岩などからなる下部層と凝灰質砂岩などからなる上部層に分けられている。ゴンフォテリウムというゾウやアンキテリウムという小型のウマなどの哺乳動物化石が産出したことで知られており、平牧動物化石群と呼ばれている。湖沼性の貝類化石や温暖性の植物化石が含まれている。

地質年代