項目 風化花崗岩 ふうかかこうがん
関連項目 凡例解説>濃飛期火成岩類>第2期火成岩類(花崗岩類)>土岐花崗岩
地点 瑞浪市日吉町平岩 松野湖東方
見学地点の位置・概要    鬼岩公園の上流にある人造湖の松野湖周辺から旧中山道の細久手(ほそくて)宿方面へ向かう県道366号飛騨木曽川公園線沿いには、風化した土岐花崗岩が露出しており、とりわけ松原湖に近い県道沿いに著しく風化して砂状になった花崗岩がみられる。
見学地点の解説    土岐花崗岩は大きな岩体ではあるが、かなり広く瑞浪層群土岐砂礫層に覆われ、それらの間から基盤岩類としてわずかに顔をのぞかせるように分布している。それらの中で、鬼岩公園のように深く刻まれた谷筋ではもともとの堅硬な花崗岩のすがたを示しているのに対して、ここでは露出している範囲すべてが砂状に風化しており、かなり粗い結晶の集合体からなる花崗岩がボロボロになって粗い砂粒の塊りのようになっている。その程度が場所により異なるために多少の凹凸を示しているが、全体として弧を描いた凹面をなして削られている。
ジオの視点    花崗岩は同じような大きさの結晶で埋め尽くされた組織(=等粒状完晶質)をもつため、結晶粒の単位でバラバラにされていくマサ(真砂)化を受けやすい。それは現時点でも地表面で受けていることになるが、岩石が壊されるほどの段階までに至るにはそれなりの時間を必要とする。現在みられるマサ化した花崗岩は、過去の地質時代(中新世後期~鮮新世ごろ)に長期間にわたりマサ化される機会のあった花崗岩が削られ、その削り残し(残骸)のマサ化部を見ていることになる。
写真 松野湖東方に露出するマサ化した土岐花崗岩
(撮影:小井土由光)
写真 マサ化した土岐花崗岩の表面
(撮影:小井土由光)
鬼岩公園
木曽川支流の可児川源流付近一帯にあり、土岐花崗岩が作り出した巨岩・奇岩からなる国指定の天然記念物「鬼岩」にまつわる公園である。人造湖の松野湖へ至る“渓流コース”や“岩屋くぐりコース”などのハイキングコースがあり、花崗岩が作る岩壁と周囲の緑あるいは秋の紅葉が織りなすコントラストなど、四季を通じて展開される自然の絶景が満喫できる。また公園内には、土岐花崗岩に比較的多く含まれる放射性元素に起因する放射能泉が湧出する鬼岩温泉がある。
土岐花崗岩
土岐市周辺に東西約12km×南北約14kmの規模で分布し、周辺に分布する美濃帯堆積岩類に明瞭な熱変成作用を与えている。おもに塊状で、一部斑状の細粒~粗粒黒雲母花崗岩からなる。苗木花崗岩とほぼ同じ時期によく似た岩相・特徴をもつ花崗岩体として形成され、放射線で黒~暗灰色になった石英を多く含み、脈状ないし晶洞状のペグマタイトに富むことを特徴とする。ウラン・トリウムの含有量が多く、それらが被覆層の瑞浪層群の土岐夾炭累層に濃集してウラン鉱床を形成している。
瑞浪層群
新第三紀の中新世に西南日本の古瀬戸内海と呼ばれる海に堆積した地層群の一つで、岐阜県の中濃地方から東濃地方へかけての可児・瑞浪・岩村の3地域に分かれて分布する。可児地域では下位から蜂屋累層、中村累層、平牧累層に、瑞浪地域では同じく土岐夾炭累層、本郷累層、明世累層、生俵累層に、岩村地域では同じく阿木累層、遠山累層にそれぞれ区分されている。これらは、大きくみると淡水域から汽水域、海域へと堆積環境が変化していったが、設楽層群などの他地域に分布する地層群に比べると浅海性の傾向がみられる。
土岐砂礫層
瀬戸層群の上部層を構成し、東濃地方の広大な東濃準平原を形成した河川が運び込んだ大量の礫により形成された砂礫層で、かなり広範囲にわたって分布する。層厚は数十~100mである。場所により礫種に差異があり、おもに濃飛流紋岩からなるタイプとおもに美濃帯堆積岩類のチャートからなるタイプがあるが、内部での層序や層相の関係はよくわかっていない。礫径は濃飛流紋岩で10cm前後、美濃帯堆積岩類で数~20cmであり、ほとんどが円磨度の進んだ円礫からなる。最大の特徴は、チャート礫を除いて、含まれている礫が風化してきわめて軟らかくなっていることであり、チャート礫だけが堅固なまま残されているため、それだけを含む礫層のように見える。
マサ(真砂)化
地下で固結した花崗岩が地表に露出したことで気温の変化により岩石の表面で膨張収縮をわずかながらでも繰り返し、岩石中の鉱物が互いに接している完晶質岩であるために膨張率の違いが鉱物単位で歪みを生じ、ばらばらにされて砂状に破壊されていく現象である。もともとは「真砂土(まさど・まさつち)」という園芸用土壌の用語として使われているが、それをもたらす風化作用に拡大して使われるようになっている。
地質年代