項目 苗木城跡(苗木花崗岩) なえぎじょうあと
関連項目 事項解説>景勝地・景観>人工物>苗木城跡
地点 中津川市苗木 城山
見学地点の位置・概要    苗木城は木曽川をはさんで中津川市街地の北側にある城山と呼ばれる峰の上にあり、国道257号から苗木遠山資料館への案内指示に従って進み、その奥の同館裏側を回って進むと苗木城址の駐車場がある。城山周辺を含めて苗木地域に広く分布している苗木花崗岩の表面はマサ化して砂状に風化している場合が多いが、ここの城壁は比較的新鮮で堅硬な露岩と人工の石垣を巧みに組み合わせて築かれており、苗木花崗岩の観察にも適している場所である。
見学地点の解説    城壁を作っている露岩の多くは丸みのある表面をもち、コケ類などに覆われて岩石自体を観察できる場所は少ないが、天守閣が載っていたとされる台座の岩盤の一部や坂下門跡の脇に露出している壁面では、かなり粗い結晶が等粒状に含まれるきれいな花崗岩組織がみられる。一般に花崗岩をおもに構成する鉱物は白色の長石類、無色透明の石英、黒色をなす黒雲母であり、全体に白色系の色調をなすが、苗木花崗岩では石英が暗色をなしており(これを煙水晶と呼ぶ)、見かけ上は全体に暗色系の色調を示す。これは、岩石自体に相対的に多く含まれる放射性元素が石英の結晶構造を歪めることで暗色化させていることによる。また、苗木花崗岩に特徴的に含まれる巨晶からなるペグマタイトが天守閣台座の露岩の南側にあたる位置にほぼ水平にレンズ状に含まれている。
ジオの視点    現在地表に現れている苗木花崗岩は、大きな熱気球のような形をしたマグマ溜りが地下で固結し、その天井部にあたる部分を見ている。マグマ溜りの中にあった気体成分は液体から分離して天井部に集まって空洞部を形成し、固結していく際にそこを利用して大きな結晶が成長することでペグマタイトが形成される。固結していく過程で結晶の中に固定されにくかった放射性元素や重い元素などが最後までマグマ中に残され、最終固結時にペグマタイト中で形成された結晶内に含まれていく。これらが苗木花崗岩に希少鉱物や放射性鉱物などが産出する理由である。
写真 苗木城の大門跡付近
(撮影:小井土由光)
写真 苗木城の坂下門跡の脇で見られる苗木花崗岩(石英が暗色をなしているために全体に暗色を示す)
(撮影:小井土由光)
マサ化
地下で固結した花崗岩が地表に露出したことで気温の変化により岩石の表面で膨張収縮をわずかながらでも繰り返し、岩石中の鉱物が互いに接している完晶質岩であるために膨張率の違いが鉱物単位で歪みを生じ、ばらばらにされて砂状に破壊されていく現象である。もともとは「真砂土(まさど・まさつち)」という園芸用土壌の用語として使われているが、それをもたらす風化作用に拡大して使われるようになっている。
ペグマタイト
花崗岩質の岩石に多く形成されるため巨晶花崗岩ともいう。花崗岩とほぼ同じ鉱物からなり、それらが著しく粗粒で、長石類と石英が文象構造をなしている岩石で、マグマが冷却固結していく過程で温度や圧力が低下し、鉱物中に取り込まれにくかったガス成分等がマグマ溜りの天井部に集まって空洞を形成し、そこに大きな結晶を成長させることで形成される。空洞内には鉱物に取り込まれずにマグマ中に残された元素が結びついて希産鉱物を作ることが多く、宝石あるいは鉱物標本として採取されたりする。



地質年代