項目 恵那峡 えなきょう
関連項目 事項解説>景勝地・景観>峡谷・瀑布>恵那峡
地点 中津川市蛭川 恵那峡大橋
見学地点の位置・概要    恵那峡は木曽川に沿って10km以上にわたる広範囲に及ぶ景勝地であり、その景観を楽しむ場所や方法にもいくつかあり、遊覧船による見学がよく知られている。ここでは比較的容易に展望できる場所として、恵那峡をまたぐ恵那峡大橋の橋上から、あるいはその北岸にある展望台からの景観を紹介しておく。ただし、橋上では駐停車禁止であることに注意しなければならない。
見学地点の解説    恵那峡は、1924(大13)年に木曽川水系で最初に作られた大井ダムが木曽川を堰き止めたことで作られた人造湖を利用した峡谷であり、ダム湖百選にも選ばれている。10km以上にわたる湛水域の両岸に露出する岩盤は苗木花崗岩であり、花崗岩の方状節理と適度な風化作用によりもたらされた奇岩に、屏風岩、軍艦岩、獅子岩、鏡岩などいろいろな名称がつけられている。それらと湖面がつくりだす景観を遊覧船から眺められることで人気が高い。
ジオの視点    花崗岩は方状節理と呼ばれる直方体をなす割れ方を示すことが多い。これは、冷却にともなう体積減によりできる割れ目に加えて、花崗岩体が隆起にともなって周囲から受けていた圧力から解放されることでできる割れ目である。地表では風化作用(マサ化)により直方体の角がとれて丸みのある表面をなすことが多いが、木曽川が深く浸食した峡谷であった恵那峡では、風化作用が十分に及ばない岩盤が露出しているため、規則的な方状節理だけが見られる岩壁が露出している。
写真 恵那峡大橋の北岸からみた恵那峡
(撮影:小井土由光)
写真 恵那峡の景観(獅子岩など)
(撮影:小井土由光)
大井ダム
木曽川流域における電源開発の端緒となった最初のダムであり、ダムに付設する大井発電所は日本初のダム式発電所である。当時としては堤高が50mを超える大規模なコンクリートダムであった。堤体を支えている岩盤は濃飛流紋岩のNOHI-1に属する恵那火山灰流シートであり、そのすぐ上流側に広く分布する苗木花崗岩に比べると堅硬な岩盤となっている。このダムによって誕生した人造湖を利用した景勝地が恵那峡であり、ダム湖百選に選定されている。
苗木花崗岩
中津川市苗木付近を中心に濃飛流紋岩の分布域の南部に広く分布し、中央部においても濃飛流紋岩の地下に広く伏在して分布する。濃飛流紋岩の少なくともNOHI-5までを貫き、NOHI-3、NOHI-4およびNOHI-5と火山-深成複合岩体を形成していると考えられている。塊状で、一部斑状の細粒~粗粒黒雲母花崗岩および角閃石含有黒雲母花崗岩からなり、放射線で黒~暗灰色になった石英を多く含み、脈状ないし晶洞状のペグマタイトに富むことを特徴とする。
方状節理
花崗岩は規模の大きなマグマ溜りが地下に長い時間にわたりとどまり、きわめてゆっくり冷却していく。冷却にともない体積が収縮することで、大きな直方体の箱を積み重ねたように形成される規則的な割れ目のことで、一般にはその間隔は数~数十mと幅広いものとなる。
マサ化
地下で固結した花崗岩が地表に露出したことで気温の変化により岩石の表面で膨張収縮をわずかながらでも繰り返し、岩石中の鉱物が互いに接している完晶質岩であるために膨張率の違いが鉱物単位で歪みを生じ、ばらばらにされて砂状に破壊されていく現象である。もともとは「真砂土(まさど・まさつち)」という園芸用土壌の用語として使われているが、それをもたらす風化作用に拡大して使われるようになっている。

地質年代