項目 傘岩・千畳敷岩 かさいわ・せんじょうじきいわ
関連項目 事項解説>天然記念物>景観>傘岩
地点 恵那市大井町
見学地点の位置・概要    恵那峡の遊覧船乗場の南東側にある高台に傘岩・千畳敷岩があり、乗船場へ向かう県道401号恵那峡公園線沿いに案内指示がある。
見学地点の解説    傘岩は苗木花崗岩が広く分布する恵那峡南岸の高台にあり、傘の形をした奇岩である。花崗岩が受けた風化作用の進行具合に差異があり、削られ方が異なることで偶然作られた形であり、数十cmしかないくびれた下部から、上部へ直径約3.3mに開いた形をなし、高さが約4.5mある。すぐ隣には千畳敷岩と呼ばれる苗木花崗岩の広く平らな一枚岩がある。さらにそこから木曽川をはさんで対岸に見える紅色の巨大な岩壁(高さ約27m、幅約18m)が紅岩(べにいわ)であり、苗木花崗岩の表面にダイダイゴケ属の一種が寄生して橙色をなしているもので、これは植物として岐阜県指定の天然記念物(1962(昭37)年2月12日指定)となっている。
ジオの視点    花崗岩の風化(マサ化)は岩体が地表へ露出したことで起こるから、風化部は現在の地表面に沿ってほぼ均等に形成されているように思われがちである。ところが風化の進んだ傘岩とまだ堅硬な千畳敷岩が並んで存在しているように、実際には風化部は不均等に分布している。これは大規模にマサ化を受けた時期が過去の地質時代(中新世後期~鮮新世ごろ)に長期間にわたりあり、その時の風化部が浸食されて、現在は削り残りを見ている状態にあることを示している。このことはこの地域全体にあてはまる。
写真 傘岩
(撮影:小井土由光)
写真 千畳敷岩
(撮影:小井土由光)
恵那峡
1924(大13)年に木曽川水系で最初に作られた大井ダムが木曽川を堰き止めて作った人造湖を利用した峡谷であり、ダム湖百選にも選ばれている。約12kmにわたる湛水域の両岸に露出する岩盤は苗木花崗岩であり、花崗岩の方状節理と適度な風化作用によりもたらされた奇岩に、屏風岩、軍艦岩、獅子岩、鏡岩などいろいろな名称がつけられている。それらと湖面がつくりだす景観を遊覧船から眺められることで人気が高い。
苗木花崗岩
中津川市苗木付近を中心に濃飛流紋岩の分布域の南部に広く分布し、中央部においても濃飛流紋岩の地下に広く伏在して分布する。濃飛流紋岩の少なくともNOHI-5までを貫き、NOHI-3、NOHI-4およびNOHI-5と火山-深成複合岩体を形成していると考えられている。塊状で、一部斑状の細粒~粗粒黒雲母花崗岩および角閃石含有黒雲母花崗岩からなり、放射線で黒~暗灰色になった石英を多く含み、脈状ないし晶洞状のペグマタイトに富むことを特徴とする。
マサ化
地下で固結した花崗岩が地表に露出したことで気温の変化により岩石の表面で膨張収縮をわずかながらでも繰り返し、岩石中の鉱物が互いに接している完晶質岩であるために膨張率の違いが鉱物単位で歪みを生じ、ばらばらにされて砂状に破壊されていく現象である。もともとは「真砂土(まさど・まさつち)」という園芸用土壌の用語として使われているが、それをもたらす風化作用に拡大して使われるようになっている。


地質年代