項目 上野台地 うえのだいち
関連項目
地点 中津川市坂下本郷
見学地点の位置・概要    国道256号は木曽川に架かる弥栄(いやさか)橋の交差点で国道19号から分かれ、坂下町の市街地をぬけてから西側の山中に入る。氷坂(こおりざか)と呼ばれる峠を越えて外洞(そとぼら)川をさかのぼるように進んでから、人造湖の椛(はな)の湖を含めたなだらかな上野台地と呼ばれる台地の上を通る。椛の湖の北西側にあたる本郷地区は上野台地のほぼ中央部に位置する。
見学地点の解説    上野台地は上野火山を構成する上野玄武岩と呼ばれる溶岩流が形成した台地で、粘り気の少ない流動性に富む玄武岩質溶岩が平坦な地形を作っている。その表面は後から浸食されて多少の起伏が見られるが、北西~南東方向に細長く延びた地域に標高550~600mでなだらかな地形を形成している。全体の地形の状況はやや遠くに離れた場所から見ないと把握しにくいが、椛の湖の南東側に広がる平坦地ではなだらかな地形を利用して椛の湖総合グランドが設置されており、そこからも周囲の平坦な地形が望める。椛の湖の北西側に広がる本郷地区では、その中央を国道256号が横切っており、その周囲に広がる真っ平らな地形が望める。
ジオの視点    上野火山と同一の性質をもつ噴出物が阿寺断層を挟んでその北東側にも分布している。特に長野県境をなす阿寺山地の上に小さな岩体として点在しており、それぞれは1回だけの噴火で活動を終えてしまった単成火山と考えられている。上野火山だけが大規模な火山のようにみえるが、1つの単成火山と考えてよく、これを含めて全体として1つの独立単成火山群を形成していた可能性がある。上野火山が形成されたとする約140万年前あるいはそれ以前にこの単成火山群が形成されたとすると、それ以降に阿寺断層が示す10kmほどの左横ずれ移動量が生まれ、両側での玄武岩類の分布にもそれがおおよそ表れている。
写真 椛の湖の北東側に広がる坂下本郷地区のなだらかな平坦面
(撮影:小井土由光)
写真 椛の湖総合グランドの南側に広がる緩やかな地形
(撮影:小井土由光)
上野火山
高山盆地の南部から阿寺山地を経て中津川市坂下付近に至るかなり広範囲にわたる地域に玄武岩類からなる単成火山が散在して分布する。そのうち旧坂下町上野を中心とした地域にまとまって分布するもので、「上野玄武岩」とも呼ばれている。カンラン石の斑晶が多く含まれ、斜長石の斑晶が少ないきわめて流動性に富む玄武岩質溶岩からなり、上野台地と呼ばれる平坦な地形を作って分布している。
単成火山
1回の噴火活動で形成された火山で、マール・火砕丘・溶岩ドームなどがその例である。ただし、ここでの“1回”とは一続きの噴火活動という意味であることに注意する必要がある。対する用語として「複成火山」がある。



地質年代