項目 陶土鉱山 とうどこうざん
関連項目 事項解説>鉱山跡・資源>非金属資源>丸原鉱山
地点 恵那市山岡町原
見学地点の位置・概要    恵那市山岡町下手向(しもとうげ)から瑞浪市陶町(すえちょう)へ向かう県道405号下手向陶線の中ほどにあたる山岡町釡屋地区と原地区の間には、県道の南側(山側)にほぼ並走するように道路が延びており、その南側に沿って山地との間に陶土鉱山の採掘場あるいは採掘跡が広がっている。それらは道路面よりも深く掘り下げた凹地として荒涼とした景観を作っているが、鉱山敷地内とりわけ作業中の現場への立ち入りは、作業の妨げになったり危険防止もあり絶対に避けなければならず、許諾を得た上で可能な範囲からの遠望にとどめておく必要がある。
見学地点の解説    鉱山の広がる低地には、地表に瀬戸層群の上部層である土岐砂礫層が、その下に下部層の土岐口陶土層がそれぞれ分布している。そのため鉱山は、土岐砂礫層を剥ぎとったうえで下位の土岐口陶土層を露天掘りしている。ただし、陶土層は限られた範囲にある堆積盆地内に分布しているため、そこを掘り尽くすと深い凹地となり、そこに水が溜まった池となっている。この採掘場の一番奥まった南端部では、破砕された白色の伊奈川花崗岩と黄褐色の土岐砂礫層が活断層の恵那山断層で接している。この断層は、南側の山塊が北側へせり上がるように上昇している逆断層で、その際に北側の土岐砂礫層は引きずられてめくれ上がるように急傾斜している。残念ながらその場所へは近づけないため、これらの状況は遠望せざるを得ない。
ジオの視点    陶土層は、周囲の花崗岩に含まれる長石類が風化して分解して粘土鉱物を生成し、それらが陥没盆地に流れ込んで堆積したものである。花崗岩には石英も多く含まれており、それらは風化されずに分解されないため、陶土層の中にそのまま含まれている。この石英粒が水に濡れると蛙の目のように見えることから、こうした陶土層は蛙目(がえろめ)粘土と呼ばれている。また、陶土層の中には、周囲に繁茂していた植物片がいっしょに流入して黒色の炭化木片として見られ、オオミツバマツやメタセコイアの大型の球顆も見られることがある。
写真 山岡町原にある陶土鉱山
(撮影:小井土由光)
写真 陶土鉱山敷地内に野積みされている陶土層の表面(石英粒と炭化木片が浮き出ている)
(撮影:小井土由光)
土岐砂礫層
瀬戸層群の上部層を構成し、東濃地方の広大な東濃準平原を形成した河川が運び込んだ大量の礫により形成された砂礫層で、かなり広範囲にわたって分布する。層厚は数十~100mである。場所により礫種に差異があり、おもに濃飛流紋岩からなるタイプとおもに美濃帯堆積岩類のチャートからなるタイプがあるが、内部での層序や層相の関係はよくわかっていない。礫径は濃飛流紋岩で10cm前後、美濃帯堆積岩類で数~20cmであり、ほとんどが円磨度の進んだ円礫からなる。最大の特徴は、チャート礫を除いて、含まれている礫が風化してきわめて軟らかくなっていることであり、チャート礫だけが堅固なまま残されているため、それだけを含む礫層のように見える。
土岐口陶土層
瀬戸層群の下部層を構成し、土岐市土岐津町土岐口周辺から多治見市へかけての地域に分布し、それより東方の瑞浪市・恵那市・中津川市の地域に点在して分布する。層厚は20~30mであり、粘土層を主体とする地層からなる。粘土層は、おもに石英粒を含む粘土(蛙目(がえろめ)粘土)、炭質物を含む粘土(木節(きぶし)粘土)、石英砂(珪砂)に分けられ、それらの層序や層相は場所によりかなり異なり、対比もむずかしい。これらは一辺が数~十数kmの小さい凹地に分かれて分布し、それぞれで耐火粘土鉱床として採掘されていったが、やがて枯渇することで多くの地域で廃鉱となっている。
伊奈川花崗岩
中部地方の領家帯を中心に美濃帯南部も含めてきわめて広い範囲に分布する巨大な花崗岩体であり、そのうち岐阜県内には濃飛流紋岩の南縁部においてそれとの接触部にあたる浅部相が広く分布し、多くの地域でNOHI-1およびNOHI-2を貫いており、それらと火山-深成複合岩体を形成していると考えられている。ただし、県南東縁の上村(かみむら)川流域では領家帯構成岩類の天竜峡花崗岩の周辺において三都橋花崗岩と呼ばれている深部相が分布するが、ここでは区別せずに扱っている。斑状あるいは塊状の粗粒角閃石黒雲母トーナル岩~花崗岩からなる。この花崗岩は、古典的な「地向斜-造山運動」論において造山帯中核部の地下深部で形成された花崗岩体の典型例と考えられていたが、1960年代に地表に噴出・堆積した濃飛流紋岩を貫いていることが発見され、地表近くのきわめて浅所までマグマとして上昇してきたことになり、それまでの火成活動史の考えを根底から覆えし、塗り替えることとなった。
恵那山断層
恵那山断層は、土岐市柿野付近から岐阜・長野県境の富士見台高原付近まで全長約43kmに及ぶ断層である。恵那市岩村町でのトレンチ調査によると、その最新活動は約7,600年~2,200年以前であったと推定されている。東濃地方の地形は、東北東~西南西方向に平行して走る恵那山断層と屏風山(びょうぶさん)断層の影響をおもに受けており、相対的に断層の南側が隆起し、北側が沈降しているため、それぞれの断層の北側には谷や盆地の連なる低地が形成されている。恵那山断層の北側には、中津川市阿木(あぎ)、恵那市岩村町、同山岡町、瑞浪市陶町(すえちょう)、そして土岐市柿野といった地域が低地をなして連なり、そこには瑞浪層群や瀬戸層群が分布し、とりわけ後者を構成する土岐口陶土層は丸原鉱山のような耐火粘土鉱床を断層沿いに形成している。断層南側の隆起山塊との間には断層崖として急峻な地形が作られ、それを巧みに利用した山城が岩村城跡にみられる。

地質年代