項目 土岐砂礫層 ときされきそう
関連項目 凡例解説>東海層群>瀬戸層群>土岐砂礫層
地点 恵那市山岡町原
見学地点の位置・概要    恵那市山岡町から瑞浪市陶町(すえちょう)へ向かう県道405号下手向(しもとうげ)陶線において、山岡町原の原中田交差点を過ぎて300mほどでガソリンスタンドがある。その少し手前に左手と左前方の2方向へ向かう道があり、後者を100mほど進むと左手に大きな崖が見える。ここはもともとは陶土を採掘した際にそれを覆っていた土岐砂礫層を剥ぎとった跡の崖をさらに掘削した場所であり、そこへ向けて道がついている。
見学地点の解説    見えている崖は全面にわたり径数cm~10cmほどの亜円礫~円礫からなる礫層で構成されているように見えるが、レンズ状に砂層あるいはシルト層を挟んでおり、それらが全体に水平層をなしていることを大まかに示している。礫層は、礫径や礫種の割合などに差異があり、それらがかなり頻繁に変化し、乱雑に積み重なっているように見える。礫径にかかわりなく硬いまま含まれている礫は例外なくチャート礫であり、その他の礫はそれに比べてかなり少なく、濃飛流紋岩の溶結凝灰岩、美濃帯堆積岩類の砂岩や泥岩などであり、これらはすべて風化して、柔かくなっている。礫層の基質部はほとんど砂からなるが、かなり少なく、小礫(とくにチャート礫)がほとんどを埋めている。
ジオの視点    土岐砂礫層は、瀬戸層群の上部層を構成し、東濃地方の広大な東濃準平原を形成した河川が運び込んだ大量の礫により形成された砂礫層で、かなり広範囲にわたって分布する。礫種がおもに濃飛流紋岩からなるタイプとおもに美濃帯堆積岩類のチャートからなるタイプがあるが、内部での層序や層相の関係はよくわかっていない。いずれも円磨度の進んだ円礫からなる。最大の特徴は、チャート礫を除いて、含まれている礫が風化してきわめて軟らかくなっていることであり、それを“クサリ礫”と称している。
写真 恵那市山岡町原に露出している土岐砂礫層
(撮影:小井土由光)
写真 土岐砂礫層中の礫の様子(チャート礫だけが硬く、それ以外の礫は風化して軟らかくなっている)
(撮影:小井土由光)
美濃帯堆積岩類
美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。




地質年代