鉱山名 一反田鉱山 いったんだこうざん
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所在地 美濃加茂市三和町川浦字一反田
対象資源 マンガン (廃鉱)
概要    美濃帯堆積岩類を構成するチャートのブロック中にある層状マンガン鉱床は、きわめて小規模なものまで入れると無数といってもよいほどあった。その中で比較的規模の大きな鉱床を稼行対象とした鉱山であり、鉱体の連続性が良く、平均的な鉱石帯の幅も1m以上あり、15,000トン以上の出鉱量が記録されている。黒褐色~褐色を呈するネオトス石と呼ばれる非晶質の含水ケイ酸マンガンを多量に産出することを特徴とする。
文献
  • 写真 天生鉱山から産出した黒鉛
    (提供:岐阜県博物館,撮影:棚瀬充史)
    写真 一反田鉱山の坑口跡
    (撮影:小井土由光)
    美濃帯堆積岩類
    美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。
    チャート
    一般には硬く緻密な微粒珪質堆積岩の総称であり、美濃帯堆積岩類を構成する主要な岩石の一つとして特徴的に産する。厚く層状に分布することが多く、これを層状チャートと呼ぶ。一部に古生代ペルム紀のものも含まれるが、ほとんどは中生代三畳紀~ジュラ紀前期に海底に堆積した放散虫などのプランクトンからなる遠洋性の堆積物で、陸源砕屑物をまったく含まない。
    マンガン鉱床
    マンガン成分が濃集した鉱床であるが、熱水性鉱脈鉱床、堆積鉱床、風化残留鉱床の3種類がある。それらのうち堆積鉱床には火山源のものと非火山源のものがあり、美濃帯堆積岩類中に数多く見られる小規模なマンガン鉱床は海底火山活動に関係した火山源堆積鉱床にあたる。


    地質年代