笠ヶ岳コールドロン
飛騨山脈の笠ヶ岳(標高2898m)周辺に分布し、これまで「笠ヶ岳流紋岩類」と呼ばれてきた火山岩類に対して、それらの形成過程を強調して与えられている名称である。もともとの岩体はほぼ完全な楕円形状をしていたらしく、引き続く深成活動や後からの火成活動により現在はその東半分が失われており、東西約12km×南北約11kmの規模で分布している。二重の環状断層で区切られた二重陥没構造をもつコールドロンからなり、隆起量の大きい地域に分布しているためにその内部がよく観察できる。おもに流紋岩質~流紋デイサイト質の溶岩・溶結凝灰岩からなり、成層した砕屑岩やごく少量の安山岩質火砕岩をともなう。下位から、中尾層、笠谷層、穴毛谷層、笠ヶ岳山頂溶結凝灰岩層に区分され、これらはほぼ水平な堆積構造を示し、積算層厚3,000m以上、総体積400km3以上の岩体を形成している。環状断層に沿って花崗斑岩の岩脈が貫入し、とりわけ外側コールドロンの縁の岩脈は連続性がきわめて良く、典型的な環状岩脈をなしている。岩体北東部で奥丸沢花崗岩に貫入され,熱変成作用を受けている。
焼岳火山群
飛騨山脈の南部にあって、焼岳火山を主峰とする複数の火山体の集まりであり、乗鞍火山帯の中で最近1万年間では最も活発な活動を続けている。形成時期により約12万~7万年前の旧期焼岳火山群と約3万年前以降の新期焼岳火山群に大別され、前者には岩坪山・大棚火山、割谷山火山が、後者には白谷山火山、アカンダナ火山、焼岳火山がそれぞれ該当する。全体に斜長石と角閃石の斑晶が目立つ安山岩質~デイサイト質の溶岩ドーム、厚い溶岩流、泥流堆積物、火砕流堆積物からなり、火砕流堆積物はすべて溶岩ドームの破壊によってできたblock and ash flow堆積物であり、激しい爆発的な噴火活動をほとんど行なっていない。
焼岳火山
焼岳火山群の新期焼岳火山群に属する火山体で、その中で最も新しく、現在も活動中の火山である。焼岳(標高2455m)を中心として、いくつかの溶岩、溶岩ドームとそれらにともなわれる火砕岩類からなる。現在の山頂部を作る溶岩ドームは約2,300年前に形成されたものである。歴史時代に入ってからの活動としては、1907(明40)年から1939(昭14)年まで水蒸気爆発が活発に繰り返され、特に1915(大4)年に水蒸気爆発にともない発生した泥流が梓川をせき止めて大正池を作ったことは有名である。最新の活動については事項解説『災害』の項目「焼岳火山噴火」を参照のこと。
地質年代