項目 環流丘陵 かんりゅうきゅうりょう
関連項目 事項解説>地形・鍾乳洞>環流丘陵
地点 美濃市立花(たちばな)/保木脇(ほきわき)
見学地点の位置・概要    長良川鉄道の湯の洞温泉口駅付近では、長良川対岸の立花海上(かいしょ)地区と駅南東側の東海北陸自動車道との間の保木脇地区にそれぞれ環流丘陵がみられる。前者は長良川に架かる立花橋から上流を望むと独立した小丘として確認できるが、後者は前者に比べて形態が明瞭ではなく、少し離れた長良川西岸から望むと確認しやすい。ここより上流の郡上八幡までの間には、美濃市上河和(かみこうわ)、郡上市美並町根村・大矢・苅安(かりやす)・赤池・深戸、郡上市八幡町西乙原(にしおつばら)にいろいろな規模で同様の環流丘陵が分布している。
見学地点の解説    河川の蛇行が大きくなり、蛇行部分が流路から切り離されて元の流路が直線的につながると、蛇行部分が曲がった流路の跡となる。平野部で起こるとそこが三日月湖として残されるが、山間部では流路跡に水が残ることはなく、そこは集落や田畑になり、それに囲まれた部分が丘陵として残される。これが環流丘陵であり、流路跡を還流旧河谷と呼ぶ。丘陵部は、美濃帯堆積岩類チャートなどの硬い岩石が削られにくかったことで残されている場合が多い。還流旧河谷には河床礫が分布しているはずであるが、それらが露出して確認できる場合はほとんどない。保木脇地区では東海北陸自動車道が還流旧河谷部を通過していることで、その橋台下付近において河床礫の証拠となる円礫が地形的な高所にもかかわらず数多く見られる。
ジオの視点    山地部は平野部と異なり基本的に隆起地域であり、河川は大地を浸食して流下している。その場合、地質の硬軟や断層などの地質構造に規制されて削られていくことが多い。いったんできてしまった流路に即して、隆起運動で河川勾配が増大するのに応じて浸食作用が下方へも側方へも大きくなり、河川蛇行が成長していくことになる。浸食がすすんで蛇行部が切り離されて離水してしまうと、還流旧河谷や環流丘陵として残されるようになる。こうした地形は、長良川沿いのほか、静岡県の大井川流域、高知県の四万十川流域、和歌山県の十津川流域に多くみられる。
写真 長良川に架かる立花橋からみた立花海上地区の環流丘陵
(撮影:小井土由光)
写真 美濃市保木脇の東海北陸自動車道の橋台下でみられる円礫(河床礫)
(撮影:小井土由光)
美濃帯堆積岩類
美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。
チャート
一般には硬く緻密な微粒珪質堆積岩の総称であり、美濃帯堆積岩類を構成する主要な岩石の一つとして特徴的に産する。厚く層状に分布することが多く、これを層状チャートと呼ぶ。一部に古生代ペルム紀のものも含まれるが、ほとんどは中生代三畳紀~ジュラ紀前期に海底に堆積した放散虫などのプランクトンからなる遠洋性の堆積物で、陸源砕屑物をまったく含まない。



地質年代