『岐阜県地質鉱産図及び概説』(1970)が発刊されてから約45年が経過し、この間に岐阜県地域に関する地質情報量は飛躍的に増大しました。さらには、まったく刷新された地質概念の構築がなされるなど、県内の多岐にわたる地質環境の各場面において、これまでとは比べものにならないほどのめざましい研究の進展がなされてきています。こうした状況を学術的な立場から整理して一枚の基本図として表現することは決して無意味ではありませんが、その機能はすでに公表されている産業技術総合研究所地質調査総合センターのシームレス地質図等で十分に果たすことができます。それらから岐阜県地域を切り出して描くだけではほとんど意味はありません。
一方で、地震災害や土砂災害などの「大地(=ジオ)」にかかわる災害が全国的にも注目されるようになり、防災やインフラ整備の面からも新たな地質学的成果を反映した精度の高い基本図が求められています。それらに加えて、環境保全、教育、観光、産業振興など、地域あるいは生活場面のレベルにおいて具体的に対応が求められる「ジオ」の課題が数多く存在しています。誰もが自分の生活にかかわる情報として日常的にそれらに目を向ける必要性に迫られており、岐阜県地域はその「ジオ」にかかわる材料に事欠かない地域といってよいでしょう。基本情報図としての地質図にできるだけ多くの「ジオ」にかかわる情報を組み合わせ、かなりの情報量を即時的に入手できる時代に即して、それらを容易に取り出せるシステムに載せることで気楽に利用してもらう、これがWeb版岐阜県地質図『ジオランドぎふ』の作成意図なのです。
こうした意図のもと、教育・行政・環境・防災・観光など、できるだけ広範囲に有効に活用していただくことを願い、岐阜県地域の「ジオ」に関わる情報発信の中心として2020年4月から岐阜県博物館がその役割を引き継ぐこととなりました。岐阜県地学調査会から引き継ぐにあたって、当初の目的に沿いそのまますべて無料で自由に活用いただくこととします。
2020年4月
岐阜県地学調査会 代表 小井土由光