未区分層(Tu)
手取層群において形成時期が明確にできていない地層群であり、岐阜県内において比較的広く分布する地域としては飛騨市神岡町北東部地域が該当し、赤岩亜層群相当層にあたるとの考えも出されているが、ここでは未区分層として扱う。そのほかに槍ヶ岳(標高3180m)周辺に点在する地層群なども未区分層である。
石徹白亜層群相当層
手取層群を形成時期で区分した場合の中部層にあたり、中生代白亜紀前期の前半にあたる時期に形成された地層群である。海成層と陸成層が繰り返されながら、やがて陸成層が卓越していくような堆積環境の変遷がみられる。岐阜県内においては、高山市荘川町の尾神郷(おがみごう)川下流地域および御手洗川地域や白川村の白山(標高2702m)東麓地域で比較的広く分布し、かつては九頭竜亜層群とされ、岐阜県の天然記念物「牛丸ジュラ紀化石」を含む牛丸層やアンモナイト化石を産する海成層(御手洗層など)などがここに分布する。また、飛騨市河合町・古川町から高山市国府町・上宝(かみたから)町へかけての地域にも帯状に分布し、さらには高山市奥飛騨温泉郷栃尾地域にも分布する。
赤岩亜層群相当層
手取層群を形成時期で区分した場合の上部層にあたり、中生代白亜紀前期の後半にあたる時期に形成された地層群である。ほぼすべてが陸成層からなり、扇状地あるいは蛇行河川をともなう河川平野の環境で形成された地層群からなる。岐阜県内においては、高山市荘川町の尾神郷川上流から白川村の大白川最上流へかけての地域(別山(べっさん)東方地域)に比較的広く分布し、おもに塊状の粗粒砂岩層がかなり厚く分布し、オルソコーツァイトの中~大礫を多量にともなう礫岩層がしばしば挟まれる。
地質年代

手取層群

   手取層群は、福井県東部から石川県南東部、岐阜県北部、富山県南部へかけての地域に分かれて分布し、中生代のジュラ紀前期から白亜紀前期にかけての時代に形成された海成~陸成の地層である。おもに砂岩・泥岩・礫岩などの砕屑岩類からなり、恐竜などの爬虫類化石を産出することで知られる。大きくみると堆積環境が浅海成層から陸成層へと移り変わっており、これまでは3つの亜層群(九頭竜(くずりゅう)・石徹白(いとしろ)・赤岩亜層群)に区分されていた。しかし、こうした区分に関しては、形成時代の見直しが化石(特にアンモナイト化石)に基づいて進められてきたことで、堆積環境の変遷も含めていくつかの見解が示されており、それにともなっていくつかの層序区分の考えが示されてきた。ここではこれまでに一般的に用いられてきた3亜層群の名称をそのまま用い、形成時期に重点をおいた区分として九頭竜・石徹白亜層群の境界をほぼ中生代ジュラ紀と白亜紀の境界(約1億4,550万年前)、石徹白・赤岩亜層群の境界をほぼ白亜紀前期の約1億2,500万年前としてそれぞれ表現する。ただし、分かれて分布する個々の地域すべてから時代決定に有効な化石が産出するわけではなく、年代測定の問題も含めて課題の残された地域もあるため、ここでは現段階での資料に基づいて区分し、時代不明の未区分層(Tu)として扱う地域もある。岐阜県内において区分できる地域では、九頭竜亜層群は分布せず、石徹白・赤岩亜層群が分布し、それぞれ石徹白亜層群相当層赤岩亜層群相当層として記述する。

文献:佐野晋一・後藤道治・成田貴人・脇本晃美・大藤 茂(2013)福井県大野市大納地域からの後期ジュラ紀アンモノイドの産出と九頭竜地域手取層群の対比再検討.福井県立恐竜博物館紀要,12号,1-16頁.
松川正樹・福井真木子・小河佑太力・田子 豪・小荒井千人・大平寛人・林 慶一(2014)手取層群の分布域頭部(富山・岐阜県境)の層序の再検討と神通層群(新称)の提案.地質学雑誌,120巻,147-164頁.