結晶片岩
広域変成作用により地下深部の高い圧力下で再結晶したことで雲母のような板状の鉱物などが方向性をもって配列し、片理をもつ板状に割れやすい変成岩の一種である。源岩の成分と変成条件により形成された特徴的な変成鉱物の名を冠して石英片岩や緑泥石片岩などと呼ばれたり、源岩の種類を冠して泥質片岩や砂質片岩などと呼ばれる。
超苦鉄質岩(U)
含まれている鉱物組成により火成岩を区分した場合、カンラン石、輝石、角閃石などの有色鉱物(苦鉄質鉱物)が70%以上を占める岩石で、おもに含まれる鉱物によりカンラン岩、輝岩、角セン石岩などに分けられる。これを化学組成で区分すると、SiO₂含有量が約45%より少ない岩石にほぼ相当し、この場合には超塩基性岩と呼ぶ。
飛騨帯構成岩類
飛騨帯は、岐阜県の北部から北陸地方へかけての地域に広がる変成岩類と花崗岩類からなる地質帯である。ただし、これらの構成岩類がこの地域のどこにでも分布しているわけではなく、それ以降に形成された岩石類に覆われたり貫かれているために、実際にはかなり限られた地域にだけ分布する。変成岩類は総称して「飛騨片麻岩類」と呼ばれ、それらを形成した広域変成作用の時期についてはいくつかの見解があるが、おおよそ3億年~4億5000万年前(古生代石炭紀・シルル紀・デボン紀)と2億4000万年前ごろの少なくとも2回にわたり重複した変成作用で形成されたとされている。花崗岩類はこれまで「船津花崗岩類」と呼ばれ、1億8000万年前(中生代ジュラ紀)に飛騨外縁帯構成岩類の分布域にまで及ぶ範囲に一斉に貫入したことで飛騨片麻岩類に熱変成作用をもたらしたと考えられてきた。しかし、それらの中には古い年代を示す岩体もあり、一律に扱うことができないことがわかってきたため、それらの形成時期を少なくとも2期に分けて区別するようになった。変成岩類も花崗岩類も複数回におよぶ複雑な過程を経て形成されているために、すべての飛騨帯構成岩類を全域にわたって一定の基準で表現することはかなりむずかしいことから、ここではそれらを「飛騨変成岩類」、「飛騨花崗岩類」と呼び、それぞれを6種類と10種類の岩相に区分することで表現する。そのため1つの岩相で示される岩石の中にも別の変成・深成作用で形成された岩石が含まれている場合もある。
地質年代

飛騨外縁帯構成岩類

   飛騨外縁帯は、飛騨帯の南側を取りまくように数km~約30kmの幅で細長く分布する地質帯である。岐阜県地域では飛騨山脈の槍ヶ岳(標高3180m)付近から高山市の奥飛騨温泉郷、丹生川町北部~国府町地域、清見町楢谷(ならだに)、郡上市白鳥町石徹白(いとしろ)などに断片的に配列して露出している。そこを構成している岩石はかなり変化に富み、古生代に形成された非変成の砕屑岩類や火山岩類、結晶片岩などからなる変成岩類、超苦鉄質岩(U)から変化した蛇紋岩と呼ばれる岩石などである。これらの岩石は、飛騨帯構成岩類を一部に含めた当時の大陸(中朝地塊と呼ばれる)の東縁で形成された陸棚や浅海性の堆積物および火山砕屑物が中生代ジュラ紀中ごろまでに大規模な横ずれ運動をともなって飛騨帯構成岩類と接するようになり、その過程でもたらされた変成岩類や超苦鉄質岩を断片的にともなって形成されたと考えられている。ただし、飛騨外縁帯と飛騨帯との間には、富山県地域や新潟県地域などにおいて宇奈月帯あるいは蓮華帯と呼ばれる変成岩類で構成された地帯が分布しており、岐阜県地域においてもそこを構成する岩石とよく似た性質の岩石が断片的に分布しているが、よくわかっていない点もあるためここではすべて飛騨外縁帯構成岩類として扱う。

文献:束田和弘・竹内 誠・小嶋 智(2004)飛騨外縁帯の再定義.地質学雑誌,110巻,640-658頁.