温泉には“大地の中から湧き出す温かいお湯”というイメージがあり、大地が生み出す恩恵の一つとして昔から保養・観光などと深く結びついて活用されてきている。しかし、『温泉法』という法律では温泉を“地中から湧出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガスで、泉源における水温が25℃以上であるか規定の成分を1つ以上含むもの”と規定している。すなわち、温泉にとって温度は不可欠の要素ではなく、それなりの成分が含まれていれば家庭で使われている井戸水でも温泉となり得るし、0℃に近い温泉もあり得る。環境省の『鉱泉分析法指針』では25℃未満の温泉を特別に“冷鉱泉”としており、県内にも昔から「鉱泉」として親しまれてきた湧水が数多くあり、それらも溶け込む成分によって個々の特徴をもつ立派な温泉ということになる。県内で最も特徴的な鉱泉は東濃地方に数多くある放射能泉であり、一定量以上の放射性元素(とりわけラドン)を含むことを特徴とする温泉である。また、近年、県内各地で1,000mを超えるような深いボーリングを掘ることで“温泉”を得て保養施設等に活用されている例が多く見られる。これらはいずれも深層地下水層からの井戸水と考えてよく、規定の成分を含んでいれば水温とは無関係に温泉となり、おそらく今後も増え続けるであろう。現時点においてもこれらすべてを漏れなく列挙することはむずかしく、ここでは自然湧出しているもの、あるいは古くから知られ、現在も利用されているものを中心に挙げることにする。また、無数にある「湧水」あるいは「地下水」も温泉と同じ範疇に含まれることになるが、ここでは特定のものに限って挙げておく。