日本列島は変動帯の中にあり、大地は現在も常に力を受けている。それに耐えられるうちは大地に目に見える変化は起きないが、限界にくると壊されてずらされる。こうした現象のほとんどは地下で起こるが、規模が大きくなると地表にまで達して地表面をずらすことになり、それらのうち最近になってずれたものが活断層である。その動く頻度はそれほど多くないが、長期間にわたり繰り返し起こると活断層に沿っていろいろな地形が形成されるだけでなく、平野や盆地の形成にも大きく影響することになる。中部地方は日本列島の中でも活断層の密集度が高い地域にあたっており、その中でも岐阜県地域はその割合がきわめて高い地域である。それらによって作りだされたいろいろな地形をわれわれは巧みに利用しており、それを知らず知らずのうちに生活の場で恩恵として受けていることになる。その一方で活断層が形成される際に生じる振動が地震であり、規模が大きなずれには規模の大きな地震がともなわれるから、ある日突然に活断層からまったく逆の災害という側面を地震という形で受けることになる。幸いなことに活断層の動きは人間の一生をはるかに超える間隔で起こるから非日常的なできごととなる反面、身の回りにあるはずの活断層が理解されないまま見過ごされていくことになる。ここではできるだけ多くの活断層をとりあげ、恩恵としての活断層のすがたと動いてしまったら多大な被害をもたらす活断層のすがたを具体的に理解していただくために実際の状況を紹介する。
なお、地質図上に重ねて示される活断層線は「岐阜県活断層図」(鈴木・杉戸編,2010)を活断層(赤線)・推定活断層(赤破線)・地震断層(青■)の3種類に括り、示された位置にそのまま表示してある。それらと個々の事項における指定場所が一致しない場合もあり、地震断層は根尾谷断層において1891(明24)年に濃尾地震を起こした断層に限られる。